海外に転勤した夫に付いていく妻は、ちまたでは「海外駐在員の妻=駐妻(ちゅうづま)」と呼ばれます。では、妻の転勤に付いていった夫は「駐夫(ちゅうおっと)」――? 共働きであれば、いつ起きるか分からないのがパートナーの転勤。妻の米国への転勤を機に会社を休職し、「駐夫」になることを選択した大手メディアの政治記者、小西一禎さんが駐夫&主夫生活を送りながら、日本の共働きや子育てのあれこれについて考える連載です。今回は「現地校を通して知る米国教育事情」。

「生活が落ち着いたら現地校に転校」というシナリオ

 「アメリカの学校に行く!」。5月中旬のこと、自宅での夕食を終え、家族だんらんの時間を過ごしていたとき、長女が突然私に対してこう漏らしました。思わず耳を疑いました。日本同様の3学期制を敷き、小学校と幼稚園を併設している日系私立学校を卒園し、4月から「ピカピカの1年生」になったばかり。お友達にも先生方にも恵まれ、良くも悪くも慣れ過ぎていたので、渡米前から私の望みだった「せっかく米国に来たのだから、生活が落ち着いたら現地校に転校」は、もはや無理と思っていたからです。

 両親と共に米国に連れて来られたばかりの子どもたちを、最初から現地校に行かせる選択肢は、もともとあり得ませんでした。渡米時、長女は5歳、長男は3歳。通学範囲内に日系幼稚園が3つもあり、他地域に比べると恵まれ過ぎた環境が用意されていた上、私自身が初めての主夫・駐夫生活、しかも初の海外暮らしということで、自分のことだけで容量オーバーを起こすのは必至でした。子どもの転園ストレス、英語ストレスに正面から向き合う精神的余裕を持てないと想定し、最初は日本語幼稚園を選んだのです。

現地の小学校、幼稚園へ……2人の反応は?

 親のエゴや希望で無理やり転校させるのは本意ではなかったので、娘の機嫌の良さそうなときなどを狙って「アメリカの学校行かない? 英語がもっと上手になるよ」とささやき続けたものの、一貫して返事は「嫌っ」。

 残りの米国滞在期間も勘案し、レゴや工作など道具遊びが大好きな息子に目を向け、適応できると思われたモンテッソーリ教育の幼稚園に9月から編入させる準備を始めました。その動きを知らないはずの長女が、新学期前に自ら意思表明してくれたので、うれしいと同時に、タイミング的にも渡りに船、大変助かりました。

 そして日系の小学校・幼稚園を8月いっぱいで離れ、新学期の9月から2人とも現地の小学校、幼稚園に通っています。自分で決断した長女は、再び1年生として現地校に入学。1カ月は行くのを泣いて嫌がると覚悟していましたが、そんなことは一度もありません。うれしい悲鳴ではありますが、完全に拍子抜けしました。

長女が通う小学校で、じゃれ合う子どもたち
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