事柄への応答とは、子どもが話してくれた学校での出来事などの中からキーワードを取り出し、内容を繰り返すことで、伝え返しとも言います。例えば「今日、○○ちゃんとブランコで遊んだんだよ」と話したら、「ブランコで遊んだんだね」と応答してあげます。「ふうん」や「そうなんだ」も有効かもしれませんが、この技法を使うと、子どもはちゃんと話を聞いてもらっているんだ、という思いを抱きます。

 この際、なるべく短く繰り返すことが大事です。親の判断や評価を挟むと、子どもは話すのを止めてしまう可能性があるため、この例で言えば、「ブランコは危ないからやめなさい」「○○ちゃんと遊ぶのはダメだよ」などと伝えるのではなく、まずは、出来事をストレートに受け止めています。

 感情への応答も、基本的には同様です。「今日、先生に怒られて、泣きたくなった」と来れば「泣きたくなったんだね」と短く返します。すると、子どもは受け入れられているという思いを親に対して抱きます。子ども自身の自己肯定感を育むことにもつながります。ここで「あなたが何かしたから、怒られたんでしょ」などと親の評価と決めつけを交えて答えたら、子どもは親に拒まれたと感じ、たちまち心を閉ざしてしまうでしょう。

「先読み、先走りすることなく、結論を急がずに」の姿勢が大事

 子どもは、親の口から発せられたキーワード的な言葉を耳から聞くことで、自分が話した内容をあらためて認識します。さらに、親が話を理解してくれているということを確認します。すると、記憶を振り返りながら、次々と想像力を働かせて、たどたどしいながらも、言葉を自分で考え、かわいらしく表現してくれるようになると思います。親は「先読み、先走りすることなく、結論を急がずに」の姿勢が大事です。しばし、子どもの世界観に浸り、子どもが体験した情景を思い浮かべてみるのは、なかなか楽しいものです。

 ただ、これは基本的にカウンセラーが用いる技法であって、カウンセリングそのものは家族や知り合いなど近い関係にある人同士では成り立ちにくいもの。子どもが教育的に間違ったことを言い始めた時は、伝え返しなどと悠長なことを言っている場合ではなく、注意し、叱り、正しい方向に導いた方がいいと父親としては実感しています。

 昨年のワンオペ時は、長期不在にした妻に対するイライラが最後まで抜け切ることなく、子どもが少しでも言うことを聞かなかったら、怒鳴り散らしていた記憶があります。