海外に転勤した夫に付いていく妻は、ちまたでは「海外駐在員の妻=駐妻(ちゅうづま)」と呼ばれます。では、妻の転勤に付いていった夫は「駐夫(ちゅうおっと)」――? 共働きであれば、いつ起きるか分からないのがパートナーの転勤です。妻の米国への転勤を機に会社を休職し、自ら「駐夫」になることを選択した大手メディアの政治記者、小西一禎さん。そんな小西さんが、米国NYで駐夫&主夫生活を送りながら、日本の共働きや子育てにまつわる、あれやこれやについて考える連載です。今回は「主夫仲間との出会い」「駐妻との関係は良好なのか」「米国で主夫は『あり』なのか」などについてお届けします。

出会いは突然やってきた

 昨年12月の渡米から1カ月半が経った冬の夜。テレビを見ながら、くつろいでいると、米国で主夫歴のある東京の友人からLINEが届きました。「ニューヨークにいる日本人の主夫を紹介しますよ。会社の先輩の旦那さんで、マンハッタン住まいです。素晴らしい出会いになることを期待しています」

 心が救われたとは、こういうことを言うのでしょう。米国東海岸は昨冬、数十年ぶりの大寒波に見舞われ、真冬日どころか、最低気温マイナス十数度という厳しい寒さの日が続きました。そんな中、新たな生活の立ち上げに奔走し、不慣れな主夫業を何とかスタートさせ、軌道に乗り始めていたころです。走りっ放しで、考える時間もなかった段階を過ぎると、次々と悩みが浮かんできました。「駐妻たちと波風立てずにお付き合いするには、どうすればいいのか」「もう少し、簡単に料理が作れないかな」「家事をどの程度、妻とシェアするべきか」

 駐妻との距離感を、駐妻に尋ねるわけにはいきませんし、妻に聞いても「う~ん、子どもの関係に影響が出ないように、適当に仲良くしといて」の一言。

 主夫&駐夫というレアな存在を探そうと、ネット検索しても、ヒットするのは既に日本に帰国した人が大半で、米国には見つかりませんでした。自らブログで交流を呼び掛けても、反応なし。次第に孤独を深めつつあった私に、一筋の光明が差し込んだような気がしたのです。

 紹介されたLINEにすぐに連絡を取ったのは言うまでもありません。やり取りはとんとん拍子で進み、2週間後に家族全員で自宅にお邪魔することになりました。初対面の主夫&駐夫同士が、家族ぐるみで顔を合わせる段取りになったのです。私の長女が5歳、長男が3歳で、かたや7歳の女の子と3歳の男の子。同じ「一姫二太郎」で、子どもの年齢も近く、パパの出身大学が同じという共通点もあり、会う前から勝手に親しみを感じていました。

最初は子どもネタ中心、そして主夫&駐夫の本音が次々と

 「こんにちは、初めまして!」。ドアを開けると、ご家族が満面の笑みで迎えてくれ、ホッとしました。仕事モードでしたら、ここは名刺をすかさず差し出す場面です。しかし、今の肩書はあくまでも「〇〇のパパ」。もちろん名刺など持参していません。お互いの名字を簡単に名乗り合い、まずは大人だけで乾杯。子どもの名前と年齢をお互いに紹介した後、最初は、子どもが好きなことや幼稚園の話、小児科医の情報交換など会話の中心は子どもネタでした。

 ただ、次第に酒のピッチが上がるにつれ、調味料の配合間違えなど料理の失敗談、妻の帰りが遅いときの子どもの寝かしつけの苦労、はたまた「ママ友ネットワークに入り込むのは、警戒されちゃって疲れますよね」「うちの妻は……」と、すぐ隣で話している妻2人をそっちのけで、主夫&駐夫の本音が次々と飛び出し、もつ鍋を頂きながら、2人だけでワインボトルを次々と空けていきました。

旅行先のアラスカで、クルーズ船から氷河を眺める子どもたち