彼は、妻の赴任に伴い、会社の休職制度を利用して渡米しました。私と全く同様の境遇です。幼子を抱え、慣れない主夫業に苦労している立場も同じ。すぐに打ち解けることができました。夕方には帰る予定でしたが、帰宅したのは午後11時。帰りのタクシーで、私はすっかり酔いが回り、上機嫌な様子でずっと大声で話し続けていたようです。

 その翌月には、家族4人でわが家を訪れてくれました。残念ながら、私の手料理はまだ人前に出すレベルに達していないので、妻とメニューを相談し、買い物は私が済ませ、妻にすべての料理を作ってもらいました。調味料を大さじや小さじで一杯ずつ量る私の調理は、かなり時間がかかります。盛り付けにも頓着しない「ザ・男子の料理」ですので、まだまだ妻を頼りにしないといけません。

なんと、もう一人見つかった

 6月には、機転を利かせてくれた、かかりつけ医の紹介で、さらにもう1人の主夫と出会いました。こちらも、長女4歳、長男1歳と年齢が近く、家も車で5分の近距離ですので、家族ぐるみで交流するのに時間はかかりませんでした。

 彼は、奥様の海外赴任を受け、職場の育児休業制度を使って、渡米してきました。昼間の6時間は子どもが幼稚園に行ってくれるおかげで自由時間を多少確保している私と違って、この主夫は、1歳半のお子さんと四六時中一緒で、ずっと面倒を見ています。正直頭が下がります。子連れで登場した初対面時、離乳食を与えたり、泣き叫ぶお子さんをあやしていたりしている姿を見ていると、尊敬の念が素直に湧いてきました。

 その後、私の自宅庭で夏の間、毎週末開催しているバーベキューにご家族をお呼びするなど、こちらも家族ぐるみで交流を続けています。パパ同士、趣味も共通しており、最近は、それぞれ妻の許可を一応得てから、週末にテニスやゴルフを一緒に楽しんでいます。

打算や計算、駆け引きとは無縁の関係

 2人の主夫とは、話していても疲れることなく、気楽でリラックスできる関係性です。

 それはなぜか。お互い、妻を支えるとの一大決心をして、米国に渡り、子育てと家事の経験を共有する者同士です。仕事上の関係であれば、常につきまとうはずの打算や計算、駆け引きとは無縁。日本でありがちな、出身大学や肩書、年収、居住地などで「どっちが上か、下か」という無意味なマウンティングももちろんありません。

自宅の庭で、毎週愛用しているバーベキューグリルと長女
自宅の庭で、毎週愛用しているバーベキューグリルと長女