キャリアアップ型の転職を重ねている親友に相談したところ「絶対、一緒に行け。人生一度きりだぞ。楽しんだほうがいい」とありがたいアドバイスをもらいました。激務を続けていた身を一度解放し、自分を客観視する時間を持ちながら、子どもとじっくり触れ合う。キャリアの共同形成に向け、妻のためにキャリアを一時的にセーブして、支える生活も悪くない。

 せっかく休職制度があるのだから、社会の最小単位である家族が散り散りになる必要はない――

 最終的に決め手となったのは、「やはり、家族は一緒にいたほうがよい」との極めてシンプルなものでした。幸いにして、休職するための制度が整っており、念願かなってつかんだ記者という職業を辞めなくて済む、ということが45歳の一大決断を大きく後押ししてくれました。

「そして、周囲の反応は?」

 もともとあまり周囲には相談しない性格ですので、最初から最後まで基本的には一人で考え、決断しました。双方の両親、親族、親しい友人に伝えたところ、誰もが応援、賛成してくれました。妻も「どうもありがとう。じゃ、手続き進めるね」と、クールに喜んでくれました。

 上司には、妻の内示が出るのに先立ち、海外に転勤になるかもしれないこと、制度を使って同行しようと思っていることを直接伝えました。「驚かないでください」と前置きしましたが、当然驚いていました。ただ、明確な判断と指示が即座に打ち出せる方で、話をすぐにのみ込んでくれました。そして、「いなくなるのは痛いが、子どもはまだ小さいしな。おまえも、子どもが遠くに離れて、生活が荒廃するよりは、一緒に行くのがよいと思う。制度があるんだから堂々と使え。そして何よりもカッコいいぞ。後輩のためにもなる」と。この言葉には本当に救われました。

 後輩、特にママ記者たちは「ステキです」と口をそろえてくれました。男性の先輩でも、共働きで苦労している人や海外勤務歴がある人からは「いい経験になるぞ。よい決断をしたと思う」との言葉をもらいました。羨ましがられたこともあります。

 一方で、反対というか、理解できない方々がいたのも事実です。そうした人々は直接言ってこないため、実際の発言内容は分かりませんし、今さら興味もありませんが、私のためを思ってというよりは、とても冷ややかな見方だったと記憶しています。

 私はこの制度を利用する5人目になりますが、男性第1号です。現在、私を含めて3人が休職しています。