旧来型の駐在員制度を見直すべき時期にも来ている

 労働政策研究・研修機構が2017年に実施した調査によると、転勤命令に関し79.7%が「会社主導で決定」で、「社員の意見・希望を踏まえて決定」は19.4%にとどまっています。また、過去3年間で配偶者の転勤を理由に退職した総合職が「いる」との回答は33.8%、転勤免除配慮を求めたことがある総合職の割合は12.2%となっています。社員の人材育成や組織の活性化を目的とした日本企業特有の転勤制度は、会社側の強い意向に基づいて行われていることが分かります。

 中でも、海外転勤は本人のみならず、パートナーや家族の人生を一変させます。付いて行くか、行かないかの二択を余儀なくされ、共働き世帯の場合は、休職制度や再雇用制度を使うかどうか、退職するか否かを迫られます。子どもがいれば、考えなければならないことはさらに増えます。2018年版の男女共同参画白書によれば、共働き世帯は17年時点で、専業主婦世帯の約1.85倍に上っています。今回取り上げた夫婦のような、お互いのキャリア形成を目指す世帯は今後さらに増えないはずがありません。

 今回取材した4つのケースから、今どきの共働き夫婦のこんな姿が浮かび上がってきました。(1)よく話し合い、双方のキャリアについてお互いを尊重し、妥協点を探って、その時点でのベストな選択を取っている、(2)パートナーの海外転勤を逆転の発想でプラスに捉え、帰国後のキャリア再設計に向けた準備を着々と進めている、(3)共働きを続けようという強い意志がある、(4)周囲の理解だけでなく、無理解にも直面している――。

 夫婦一体となってキャリアを形成し、柔軟な生き方を模索するには何が必要か。安心して同行できる休職制度のさらなる拡充をはじめ、「配偶者は相手を支えることに尽くすべきだ」として、パートナーが赴任先で就労するのを実質的に禁止している旧来型の駐在員制度を見直すべき時期にも来ていると思います。そして、何よりも重要なのは、共働きを当たり前としている世代への理解と温かい視線ではないでしょうか。

筆者も参加したNY・タイムズスクエアでの野外ヨガイベント
筆者も参加したNY・タイムズスクエアでの野外ヨガイベント

文・写真提供/小西一禎