海外に転勤した夫に付いていく妻は、ちまたでは「海外駐在員の妻=駐妻(ちゅうづま)」と呼ばれます。では、妻の転勤に付いていった夫は「駐夫(ちゅうおっと)」――? 共働きであれば、いつ起きるか分からないのがパートナーの転勤です。妻の米国への転勤を機に会社を休職し、自ら「駐夫」になることを選択した大手メディアの政治記者、小西一禎さん。そんな小西さんが、米国NYで駐夫&主夫生活を送りながら、日本の共働きや子育てにまつわる、あれやこれやについて考える連載です。

今回は特別版として「妻へのインタビュー」を敢行。さて、どんな本音が飛び出すのでしょうか。

記者ですから、妻の本音を取材してみました

 2017年12月の渡米から、早いもので1年半がたちました。人の話を聞き、記事を書くのが仕事である記者から駐夫・主夫に転じ、四苦八苦しながら異国での新生活を立ち上げていたのは、つい先日のことのような気がします。そこで、今回は、少しばかり趣向を変え、「最も身近にいる人から見た私の1年半」ということで、記者ならではのインタビューを妻に対して行い、彼女のフィルターを通した私の駐夫生活を振り返ってもらいました。

 「付いてきてやった感をこの先も一生、振りかざされて、負い目に思うよう強制されるのなら、それだけでうんざりする。付いてこなければよかったんじゃない、とすら思うよ」

 「まず、自由にしゃべってみて」と始めたインタビューの冒頭から、いきなりストレートパンチを食らいました。付いてきてやった感? 何を言っているのかよく分からないので、真意を突っ込むと「キャリアを中断して、付いてきてやった感をまだまだにじませてるでしょ。出してないつもりでも、出てるよ」

 頭の中から、すっかり取り除いたつもりでしたが、連載2回目の記事で取り上げた、NYで知り合った、私たちより若い駐夫カップルとの意識の違いについて、改めて指摘されてしまいました。1年半が経過しても、実際のところ、まだまだ伝統的な価値観から離れられない私。とは言え、一大決心をしたにもかかわらず「付いてこなければよかったんじゃない」との発言は容認できません。

 反論しようと思いましたが、何としてもインタビューを成功させなくてはいけません。20数年間の記者経験でも、取材相手の気分を損ねたり、怒らせたりすると、あまり好ましい結果は待ち受けていませんでした。ひとまず自分の心を落ち着かせ、表情こそ引きつっていたとは思いますが、話題を変えるべく、私に満足している点を聞いてみました。

日本にいたとき「あまりにも的外れな答えに本当に腹が立った」

 「渡米当初は、色々と葛藤にさいなまれて大変そうだったけど、頑張ってくれている」「主夫に向いてない人が、一大決心をしてよくやってくれてるよ。子ども向けのごはんが作れるようになったから、安心して任せられるし、子どもの友達のママたちとも仲良くしてくれてるでしょ。人間的に成長したと思うし、とてもうれしいよ」。私は妻より2歳年上ですが、何とも言えないぐらいの上から目線で、実に直線的な言葉が返ってきました。