海外に転勤した夫についていく妻は、ちまたでは「海外駐在員の妻=駐妻(ちゅうづま)」と呼ばれます。では、妻の転勤についていった夫は「駐夫(ちゅうおっと)」――? 共働きであれば、いつ起きるか分からないのがパートナーの転勤です。妻の米国への転勤を機に会社を休職し、自ら「駐夫」になることを選択した大手メディアの政治記者、小西一禎さん。そんな小西さんが、米国NYで駐夫&主夫生活を送りながら、日本の共働きや子育てにまつわる、あれやこれやについて考える連載です。

今回は「米国男子は家事をしているのか?」「私の家事モチベーションを支えるもの」などについてお届けします。

イチローの言葉に大きくうなずいた

 「アメリカに来て、外国人になったことで人の心をおもんぱかったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れた。この体験というのは、体験しないと自分の中からは生まれないので」

 同世代のスーパースター、日本プロ野球が生み出した至宝・イチロー選手が3月下旬、引退しました。同じ平成の時代を生き、同じ時期に米国に滞在できたことはうれしい限りです。引退当日は朝早く起きて、試合開始前からずっとテレビで見ていましたが、あふれる涙は最後まで止まりませんでした。試合終了後の記者会見の、ユーモアを交えながらも、巧みな表現力と豊富な語彙を駆使した彼の発言は、すべてが深く、重みがありました。

 最も印象に残り、強く心に刻まれたのが、最後の質問で答えたこのフレーズです。ずっと日本にいたままだったら、100%聞き流していた自信があります。イチロー選手は、恐らく初の日本人野手として受けた差別経験だけでなく、自分がマイノリティーになったために、相手の思いを理解できるようになったということを念頭に発言したのでしょう。米国では、日本人は外国人=マイノリティーです。付け加えると、在米日本人のうち、私のような駐夫はさらにマイノリティーということになります。いわば、二重の意味でマイノリティーです

 政治記者から主夫・駐夫に立場が変わった私も、今では少なからず「人の心をおもんぱかったり、人の痛みを想像したり」することができるようになりました。外国人になったからというのはもちろんのこと、日々、家事・育児に追われている、日本のママたちに対してもです

妻の協力を得られないと想像するだけでゾッとする

 政府の2018年版男女共同参画白書によると、子ども(6歳未満)を持つ夫婦が1日に費やす家事・育児時間の先進7カ国の状況を比較したところ、日本の夫は1時間23分で、なんと最下位でした。

ニューヨーク・セントラルパークで咲き誇る桜と摩天楼
ニューヨーク・セントラルパークで咲き誇る桜と摩天楼