自動車社会の米国故、あらゆる公共交通網が発達しているニューヨークなど一部の都市を除くと、車通勤が主流です。日本のように「帰りに赤ちょうちんで引っ掛けて、終電で帰る」というような文化とは無縁です。加えて、ファミリー第一の考え方が通底しているため、早朝から働き始め、夕方の定時には帰ります。先に帰った夫婦どちらかが家事を始め、遅れて帰ってきたほうが手伝うとのこと。専業主婦家庭でも、奥さんは家事育児への参画を夫に求めるそうで、妻の会社の米国人幹部は連日の多忙にもかかわらず毎朝、子どもの弁当を作っています。

 これらとは別に、共働き家庭では、シッターやナニーを普通に活用しています。先のデータでは、米国の妻の家事・育児時間は5時間40分で、日本よりも約2時間短くなっています。妻の時間が短いのは、このことも左右しているとみられます。知り合いに、この日米比較データを見せ、日本のワンオペ育児の話を紹介すると「あり得ない文化だ。ご主人は何をしているのか」と驚いていました。

「パパのごはん、おいしくない、ハッピーセットが食べたい」

 では、どうして日本男子は家事をしない、あるいは、したがらないのでしょうか。昨年の記事では、私たち夫婦の両親ぐらいの世代について「一家の大黒柱として、家事・育児を何もしないことが威厳の証明だったのかもしれません」と考察しました。

 核家族化が進んでいる現代でも、この家父長制的な考え方は、形を変えて残っているかもしれません。一例として「年収が低いほうが家事をすべきだ」という共働き家庭での議論があります。高い年収を得ることで、家庭に貢献しているのだから、家事はする必要がないというものです。この考え方がある家庭では、スタート時点で、女性だけが育休や時短勤務制度を活用していると思われます。そうなれば、自ずと妻の年収は低くならざるを得ないわけで、家事・育児時間の偏りは加速します。

 長時間労働や土日出勤を強いられ、家族の犠牲を余儀なくさせられるケースもあります。早く帰りたくても、諸々の事情が許さない背景は理解できます。中には、会社を早々に出ても、家に帰りたがらず、喫茶店などで時間を潰す「フラリーマン」もいるようですが。

 「パパのごはん、おいしくない。0て~ん。マックのハッピーセットが食べたい」。渡米当初、長女、長男に、異口同音にこう言われたことがあります。今でこそ、比較的自由自在に食事を作ることができるようになりましたが、私自身、日々の献立作りに苦しみました。