読者アンケートでも見られた「あと1人が諦められない」という声。不妊治療をしている人にとって時間的、経済的負担は大きいですが、何よりつらいのは精神的ストレスです。子どもが欲しいという思いで治療に打ち込むほどつらさが増すこともある不妊治療とは、どのような距離感の持ち方があるでしょうか。また、アンケートでは、2人目を諦めることを決めた人からも、「本当にそれで良かったのかモヤモヤする」という声が聞かれました。

こうした葛藤を乗り越えるための考え方を、前回に引き続き、臨床心理士・公認心理師で生殖心理カウンセラーの平山史朗さんに教えていただきました。

【1人っ子確定? 2人目どうする問題のリアル】
(1) 1人っ子親の約9割「理想の子どもの数は2人以上」
(2) 不妊治療 諦められない2人目…モヤモヤはいつまで ←今回はココ
(3) 子どもを理由にしない 夫婦のセックスレス脱却法
(4) 求める夫と逃げる妻 男女別セックスレスの言い分
(5) 出産を機に上の子をかわいく思えなくなった…なぜ?

できることをやり切るまで納得できない

 休日に公園で見かける楽しそうな家族。自分たちも他人の目からすればそう見えるはずだけど、うちは1人っ子。きょうだいで一緒にはしゃぐ声や上の子が下の子の世話をする姿への憧れは拭えない。子どもの「あかちゃんはいつくるの?」という無邪気な質問にさえモヤモヤ心を刺激される…。そんな光景も他人事ではないという人は多いのではないでしょうか。

DUAL読者の声 【2人目が諦められません】

● (2人目ができないことを)全然受け入れられていません。まだやれることがたくさんあるので。それをやり切った後で、「授かりにくい体だったのに1人来てくれたのがラッキーだったんだ」と割り切るのだと思います。(35歳、総務・人事)

 今回実施した読者アンケート(2019年6月6日~30日に実施。回答者数は199人で、そのうち92%が女性)では、全体の3割の人が2人目不妊を経験したことがあると答えました。2人目不妊とは2人目を産みたくても、何らかの理由でなかなか子どもができない状況を指します。

 生殖心理カウンセラーの平山史朗さんは、2人目不妊の人を取り巻く状況について次のように分析します。

 「2人目不妊の人は、すでに子どものいる世界に属しています。そこは望んでも子どもが授からない『不妊の世界』とは違い、『多数派で安心できる世界』だったはずです。けれども実際に子どものいる世界に入ってみると、2人以上子どもがいることを『当然』と考える人たちとの間に格差を感じて悩むことになります。かといって、不妊の苦しみを1人目不妊の世界の人たちと共有しようとしても、『あなたは子どもがいるから私たちとは違う』と同じ不妊のコミュニティーに属することも許されないのです。どこの世界にも居場所がない、独特の孤立感が2人目不妊の人を苦しめるのです

 こうした孤独な2人目不妊の中でも、不妊治療に踏み切ったという人からは、やれることがある限りはどうしても諦められないという声も聞かれます。

 子を授かるためには万策尽きるまでやり尽くしたいという気持ちは当然のものです。ただ、治療が長引く中で、こうした気持ちはかえって自分を苦しめることになるにもかかわらず、諦めることができないのはなぜでしょうか? 平山さんによると、その裏には「諦めること」への罪悪感があるといいます。

 次のページからは、治療との距離感の持ち方やモヤモヤした気持ちとの付き合い方について教えてもらいます。

<次のページからの内容>

● 不妊治療は努力が絶対ではないというモヤモヤ
● 諦めてもモヤモヤが続くのは、当然のことだと受け入れる
● 心の中にいた子との実現できない日々を悲しみぬく
● 「治療をやめた記念日」や「子どもへの手紙」が効果的