保育園では年少・年中・年長となる3~5歳児。乳児から幼児へと移り変わる中で、小学校入学を意識しながら子育てをしていく時期に当たります。日本の教育は過渡期にあり、これから教育改革がどんどん進められていく状況です。そんな時代の変革の最中に、変化の大きい3~5歳児を育てている親は、何を心掛けていけばいいのでしょうか? 保育士として12年間、保育に携わってきた大阪教育大学准教授の小崎恭弘さんに、3~5歳児の子育てや教育について語っていただく本連載。第11回となる今回は、前回に引き続き、子どもに人との関わり方を学ばせるために親ができることや、心掛けるべきことについてアドバイスをいただきました。

園は「居心地が良すぎる空間」を優先せざるを得ない

編集部(以下、――) 前回の記事で、子どもに人との関わり方を学ばせるために、親は「丁寧な関わり」と「安定性」を強く意識すべきだというアドバイスを伺いました。他にも3~5歳の子どもの親が心掛けるべきポイントはあるでしょうか?

小崎恭弘さん(以下、敬称略) 子どもが友達と関わる中で、我慢したり無理したりすることを、親は避けないでほしいということを、ぜひお伝えしたいですね。

 友達とケンカしたり、嫌な思いをしたり、悔しさ・悲しみを感じたりする、というのは、人の成長においてものすごく大事なこと。保育の現場ではそうした経験も積ませ、乗り越えていく力を育んであげたい、と考えている現場の保育士たちは少なくありません。

 ただ、多くの家庭では、子どもに我慢や無理をさせることを避けようとする傾向にあるようです。親がそうしたスタンスだと、保育園にもそれを求めてしまう。結果として保育園側は、子どもにとって「居心地が良すぎる空間」を作ることを優先しなくてはならなくなります。すると、子どもが「王様」になってしまうという新たな問題が生じます。そうならないよう、親の皆さんも少し意識を変えていただきたいと思います。

子どもが友達とケンカをしたり、我慢したりするのも、人との関わりを学ぶ上で大切。親は、そうした「小さなネガティブな経験」をたくさん積ませてあげることを意識したい
子どもが友達とケンカをしたり、我慢したりするのも、人との関わりを学ぶ上で大切。親は、そうした「小さなネガティブな経験」をたくさん積ませてあげることを意識したい

 ネガティブな経験や体験といったものは、世の中には必ずあります。社会というのは時として残酷であったりするので、そういった場面に直面した時に対応できる力が育っていないと、この先、困った状況に陥ってしまうこともあるでしょう。親は、ネガティブな小さな経験を、人との関わりの中でたくさん積ませてあげられるような環境作りを考えてあげてほしいですね。