保育園では年少・年中・年長となる3~5歳児。乳児から幼児へと移り変わる中で、小学校入学を意識しながら子育てをしていく時期に当たります。日本の教育は過渡期にあり、これから教育改革がどんどん進められていく状況です。そんな時代の変革の最中に、変化の大きい3~5歳児を育てている親は、何を心がけていけばいいのでしょうか? 保育士として12年間、保育に携わってきた大阪教育大学准教授の小崎恭弘さんに、3~4歳児の子育てや教育について語っていただく本連載。第10回の今回は、子どもに人との関わり方を学ばせるために親がすべきことをアドバイスしていただきました。

昭和の時代に比べて「家族」が縮小。家族の触れ合いが減っている

編集部(以下、――) 前回の記事で、3~5歳の子どもたちは、さまざまな体験・経験を通じて、毎日「生きる練習」をしているといったお話をお伺いしました。人との関係性を学ぶことなども、その練習の中に入っているんですよね?

小崎恭弘さん(以下、敬称略) はい。生きる上で、人との適切な関わり方を知ることは非常に大切ですからね。人との関係性を学ぶ上で、家族や家庭の存在はとても大切です。家庭というのは、子どもたちにとって自己の概念や人間性を形成するための最も重要な場所。これを「第一次集団」と呼ぶのですが、子どもたちはまず、家庭の中で基本的な人との関わりであるとか行動様式といった「人としての基本的なこと」を身に付けていくわけです。

 ところが今、その第一次集団である「家族」がものすごく縮小しています。2016年時点での平均世帯人数は2.47人。1950年代には4人台で推移していました。子どもたちが人との関わりを学ぶための基礎となる第一次集団、つまり家族がどんどん縮小されていく中で、家族が触れ合ったり、家族だんらんをする機会が大きく減少しています

子どもと長時間関わる保育士との関係が重要に

―― 共働き家庭が増えていることも関係していそうですね。

小崎 それもありますね。家族の触れ合いや家族だんらんの時間が十分とれない共働き家庭にとって重要となってくるのが、保育所です。現在、最も長く保育所にいる子どもだと、13~14時間。帰宅したら8~9時間は寝るでしょうから、帰宅して起きている時間というのは、3時間程度しかありません。

 そんな中で、誰が最も子どもと長い時間関わっているのかといえば、保育士。乳幼児に対する保育士の影響力はものすごく大きいので、保育士が人との関わりの基本というものをきちんと子どもたちに伝えていく必要があることは確かなのですが、「保育園の先生が教えてくれるから、親は何もしなくていい」というわけではありません。保育士は保護者の代わりにはなれませんし、なってはいけないと思います。あくまでも、子どもたちと直接関わりつつ、保護者を支えていくことが保育士の最大の仕事なんです。