子ども一人ひとりを見ることの大切さ

小崎 子どもの発達において、身辺自立に関することだけでなく、遊びも重要です。3〜5歳の時期は、遊びもどんどん発達していきます。

 子どもの発達段階において、最初に始まるのは「一人遊び」です。1~2歳くらいになると発達し始めるのですが、その次に、「並行遊び」をするようになります。砂場遊びをしたり積み木遊びをしたりするときには、友達と一緒に遊んだりするようになります。ただ、一緒の場で同じ遊びをするけれども、混ざることはありません。同じ遊びをするけれども、それぞれに遊んでいます。

 その後に、友達との関わりのある遊びをするようになっていって、協力していく遊び、ルールに基づく遊びへと発達していく。そこで忘れてならないポイントは、一人遊びはずっと続くということです。並行遊びをするようになっても、一人遊びもする。5歳になろうが6歳になろうが、友達とも遊ぶけれども、一人でも遊ぶ。自分の世界に没頭し、一人で遊ぶ力を持っている子どもは、しっかりとした自分を持った強い子に育ちます。

 ここで気を付けていただきたいのは、子どもの成長・発達というのは、大人が思い描くようにキレイにシュッと順調に伸びていくものではないということです。それぞれの子ども一人ひとりが、何かベースになるものを持ちながら、そのなかで子どもたち自身が変化しながら成長・発達をしていくものだということ。個人差があるものだということを忘れないでいただきたいと思います。

―― 子どもの成長を見守るうえで気を付けることはありますか?

小崎 親というのは子どもが何か一つのことができるようになると、それだけでわが子が一つのステップをクリアしたというイメージを持ってしまいがちです。多くの親の頭のなかには、ステップアップしていって階段を上っていくイメージがあると思いますが、子どもの発達というのはそんなに単純なものではありません。

 イメージ的には、凹凸がずっと続いていきながら、右肩上がりになっていく感じ。株価のチャートみたいに、ドーンと下がることもあれば、逆に急激に上がることもある。極端なV字回復みたいなことだってあるでしょう。

 例えば、3歳以前に、たまたまトイレでオシッコができるようになったら親はものすごく喜び、「これでトイレの介助から解放される!」と思うことでしょう。しかし、次の日にはトイレ中がビショビショになったとなると、親はショックで落ち込んでしまったり……。事あるごとに一喜一憂していたら、身体が持ちません(笑)。そういう意味でも、子どもの成長・発達というのは、凹凸のある曲線を描きながら、右肩上がりに推移していくものだというイメージでいるといいでしょう。

 3~5歳というのは、集団生活のなかで子どもたち一人ひとりが自分を発揮していくようになる時期です。そういう意味では、親からすれば子育て期において、ものすごく面白いタイミングであると言っていいのではないでしょうか。そんな時期を大事にしていってほしいと思います。