これからの子育てにおいて、大切な親の役割とは

―― 今、3~5歳の子育て中の親は、どのような子育てを目指していけばいいのでしょうか?

小崎 こんな話をすると、何をどう準備していいのか慌ててしまう人もいると思いますが、今回の改訂でいきなり180度変わるということではありません。国は「今までの幼児教育を継承して」といった言い方をしているので、緩やかに移行していくイメージでいいと思います。これまでの幼児教育の在り方を整理して、より具体的に定めていくという感じです。

 日本全体で幼児教育に統一感を持たせる形にしていって、それが連動性を持って小学校教育につながっていけるような体制になっていくというふうに考えていただければいいでしょう。幼児教育に関わる人たちの専門性も高くなり、乳幼児の段階からシッカリと育てていくことが子どもたちの人生の礎を築く重要な教育になるという位置付けがより強調されるようになったということです。そこを親の皆さんも意識しながら、わが子の子育てをどうしていくべきか、慌てることなく考えていけばいいのではないでしょうか。

―― 偏差値重視の認知能力から非認知的能力を重視する教育へシフトしていくといった流れを頭の片隅に置いておいたほうがいいのでしょうか?

小崎 そういうことですね。このようにシフトしていくことになったのは、答えが1つといった明確な時代から、答えが複数あったり、これといった正解のなかったりする先行き不透明な時代になってきたからです。そんな流れのなかで求められるようになってきたのが、「生き抜く力」であるとか、「物事に取り組む姿勢」「考える力」といったものです。

 分かりやすい話をすれば、例えば、「カエルの種類を挙げなさい」といった出題がなされたとします。そこで、人間が自分の知っているカエルの種類をいくら頑張って挙げたとしても、瞬時に膨大なネット上の情報を収集して提供できるAIには到底及びません。しかし、これからの時代を生き抜く子どもたちは、進化し続けるAIに負けてばかりではいられないのです。

 シンギュラリティ(AIが人間を超えるとき)が到来するといわれる時代を生きる子どもたちが大人になったころ、私たち親世代の多くが想像もできない社会になっていることでしょう。そんななかで、子どもたちにはどのような力が必要になるのかと言えば、AIにはできないクリエーティビティーであったり、全く別のモノやアイデアを組み合わせるといった斬新な発想力であったりということになるでしょう。そういった力を養うために、今から親にできることは何なのか。そういったことを考えながら子育てをしていくことが、これからの親にとって大切な役割になってくるのではないかと思います。  

(取材・文/國尾一樹 イメージ写真/鈴木愛子)