保育園では年少・年中・年長となる3~5歳児。親からすれば、乳児から幼児へと移り変わる時期でもありつつ、小学校入学を意識しながら子育てをしていく時期でもあります。一方、日本の教育は過渡期にあって、これからどんどん教育改革が行われていく状況のなかで、3~5歳児を育てている最中の親は、どのような子育てをしていけばいいのでしょうか? 保育士として12年間、保育に携わってきた大阪教育大学准教授の小崎恭弘さんに、これからの子育てや教育について語っていただく本連載。第7回目の今回は、夫婦間協議に基づく「戦略育児」や、長期的視野に立つことの重要性などについてお話しいただきました。

子どもは思ったように育たないけど、心配したようにも育たない

編集部(以下、――) 共働き家庭は常に時間に追われていて、仕事でも家でも、やるべきことが山積みになりがちです。「子どもに十分に手がかけられていない」という罪悪感を抱いている方も少なくありません。そんな忙しい共働きの私たちでも、いい子育てはできるのでしょうか。

小崎恭弘さん(以下、敬称略) いい子育てをするために親がやるべきことは、たくさんあると思われがちですが、実は、親がすべきことは以下の3つしかないと僕は思っています。

いい子育てをするために親がやるべきこと

1 思いを持って大事に育てる
2 心配する
3 離れるタイミングを決める

 保育の世界には「子どもは思ったようには育たないけれど、心配したようにも育たない」という言葉があります。いろんな子どもたちを見てきた私から見ても、この言葉は本当に名言だと思います。なぜなら、この二つの思いのちょうどいいところで子どもは育つと感じるからです。親の「思い」と「心配」の二つのバランスを意識しつつ、わが子の自立を見据えることが、子育てにおける最も大切なポイントだと思います。

 こうしたポイントを押さえた上で、夫婦で話し合う時間を確保して、作戦を立てるのがおすすめです。

―― 作戦、ですか。

小崎 はい。これを私は「戦略育児」と呼んでいるのですが、要するに子育てをする上での戦略を練りましょう、ということです。ママもパパも、仕事で新しいプロジェクトを立ち上げる際には、戦略を立てますよね。プライベートでも、家を買うような場面では、あらゆることを調べて検討し、必死になってローンのシミュレーションもすると思うのですが、なぜか子育てとなると、行き当たりばったりという親があまりに多いように感じています。子育ては、本来は仕事より家の購入より大切な、夫婦協働の壮大なプロジェクトのはずですよね。

―― 確かに。子育てこそ戦略を立てるべき、ということですね。「戦略育児」は、具体的にはどんな感じで進めればいいのでしょうか。

共働き家庭の場合、忙しさに任せていろいろなことが流れていってしまいがちだからこそ、改まって夫婦で戦略を立てる場を設けることが大切(写真はイメージ)
共働き家庭の場合、忙しさに任せていろいろなことが流れていってしまいがちだからこそ、改まって夫婦で戦略を立てる場を設けることが大切(写真はイメージ)