遊び道具は自分で工夫する余地のあるものを

―― なぜそうするのでしょうか。

小崎 主体的でないと思いが入らず、成長につながらないからです。いくらやれやれと言われても、やらされたことは身に付きにくいんですね。これが最近、よく耳にするようになったアクティブラーニング。特に3〜5歳の子どもにとって大切です。

 主体的な体験ができるような豊かな環境を、なかなか外出できない今だからこそ、家の中でも整えていってほしいと思います。例えば、子どもたちが大好きなままごと。保育園では、100円ショップなどで購入できるホンモノのフライパンや鍋をそろえておいて、ガスコンロなどは段ボールなどを使います。そこに、ペットボトルのふたやプラスチックのチェーン、フェルトをただ巻いたものなどを置いておくだけ。すると、子どもたちはペットボトルのフタをフライパンに入れてガシャガシャ音をさせて「チャーハンできたよ!」とか、いろんないろ・形のフェルトを鍋に入れて交ぜて「カレーできたよ」とか始めます。チェーンはラーメンやスパゲティになっていくんです。

 子どもたちが自分で考えて工夫していくための余白をたくさん設けてあげることで、創造性が広がっていきます。このような環境を家庭でつくることをお勧めしたいですね。

―― 逆にいうと、精巧に作られて子ども自身が工夫する余地のないおままごとセットみたいなおもちゃはNGということですね。遊び道具を考える際に、念頭に置いておきたいと思います。ところで、おうちの中でとことん浸れる遊びとして、オススメのものは何かありますか。

小崎 砂・水・泥を使った遊びがいいですね。これらはすくうと持ち上がるし手のひらをひっくり返すと落ちる。このように、操作性が高く、自分の思う通りにコントロールできるものというのは、3〜5歳の子どもにとっては没頭しやすい遊び道具になります

 砂遊びや泥遊びは、なかなか家の中でやりにくい印象がありますが、泥のかわりにスライム、砂場の代わりに室内用の砂遊びグッズを用意すれば、家の中でも楽しめます。水遊びも、お風呂場を利用すれば可能です。鏡に絵を描いたり、ゴーグル用意して潜りっこをしたりして、全身でダイナミックに水に触れ合ってみてください。

 他にも家の中でできる遊びとしては、先ほどお話しした積み木の他、ブロックなどもお勧めです。これも、自分の思う通りに作っていけるという意味で、操作性の高い遊びです。こま回しなどもいいですね。ある日、子どもたちの前でこまを回してみたところ、みんな大喜びで遊ぶようになりました。5歳くらいなら本将棋もすぐに覚えます。将棋が好きな方ならやってみるのもいいんじゃないでしょうか。最初は挟み将棋から始めてみて、親子で勝負してみるのもいいでしょう。

Iメッセージで伝えながら子育てをしよう

―― 「新時代を生き抜く3〜5歳の子育て」ということでこれまで12回にわたってお話を伺ってきましたが、最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

小崎 この連載の最初のほうでもお話ししましたが、私たちはまさに「モデルなき時代」を生きているわけです。その中で正しい子育てだとか正しい教育といったものがますます分からなくなってきている。保育・教育現場も混乱する今、親の皆さんも子育てについて大いに迷っていることでしょう。

 ただ、何が正解なのか分かりにくい今だからこそ、「うちではコレを大事にしたいよね」とか「こういう子どもに育てたいよね」といったことを夫婦で話し合い、それを軸に生きている姿を子どもに見せたり考えを伝えていったりしていくことが、ますます大事になっていくのではないでしょうか。特に3〜5歳の子どもというのは、家庭の教育が子どもの成長に大きく影響します。そんな時期こそ、親が自信を持って育てていくことが大切。私はこう育てたいとか、これが大事だと思うことを「私は」というIメッセージで伝えながら子育てをしていってほしいですね。

 子育てというのはしゃくし定規なものでもないし、方程式なんてありません。こう育てたからこうなるなんて単純なものでもありません。ただ、ひとつだけ皆さんにお伝えしたいのは「一生懸命に子育てをしてください」ということ。そして、子どもに生きていく楽しさを教えてほしい。そのためには、親が楽しい生き方をしていくということが一番大事です。人生を楽しみながら自由に子育てをしていけば、おのずと納得のいく子育てができるようになるでしょう。大変なことが続きますが、共に頑張りましょう!

取材・文/國尾一樹 イメージ写真/PIXTA