遊びにおいて、ルールを守らせることは無意味

小崎 セミを捕る、ダンゴムシを集める、砂でご飯やケーキを作る、大きな砂山を作ってトンネルを掘る……。夢中で遊んでいるとき、子どもは小さな失敗経験を繰り返しています。何度も何度も失敗しながら、次は失敗しないためにはどうしたらいいのか試行錯誤をしているのです。そうした小さな失敗経験と小さな成功体験を積み重ねることが、子どもの自信につながっていきます。

 こうすればいいんだ、諦めなければできるんだと思えるようになることが、まさにレジリエンス。逆に、この遊びに浸る経験・体験の少ない子どもというのは、レジリエンスだけでなく、いろんな意味での力が育ちにくいと言っていいでしょう。

―― 自分の子どもが遊びに浸っているとき、親はどのように関わったり声がけをしたりするのがいいのでしょうか?

小崎 そっとしておくのが一番ですね。「こうしたほうがいいんじゃない?」とか「コレ、水をかけたら固まりやすくなるよ」なんてアドバイスするのはやぼです。子どもの遊びの邪魔をしない大人になりましょう(笑)。大人が知っている知識なんて、子どもが成長していくなかで勝手に身に付いていくものですから。下手にアドバイスをするのではなく、浸る経験が大切だということを認識し、そっと見守りたいですね。

 心理学では、「ルールや制約、時間、場所から完全に自由になるもの」が遊びであると定義されています。多くの親は「ちゃんとルールを守って遊びなさい!」なんて言うのですが、そんな遊びは心理学的には存在しません。本来、遊びというのはむちゃくちゃなものなんです。子どもと鬼ごっこをしていてタッチしようとすると「タンマ!」って言う。「そんなルールいつできたの?」って聞くと「今できた!」って。これが子どもの遊びの本質なんです。

家でも子どもたちが主体的に遊びに関わろうとする環境づくりを

―― なかなか外出できない今、3-5歳を育てている親は、何を心がけたらいいでしょうか。

小崎 ぜひやっていただきたいのは、家の中で遊びに浸れる環境を設定する、ということですね。保育園では環境構成といって、子どもたちが主体的に遊びに関わろうとする環境づくりに力を入れています。一昔前までは、芋掘りに行った翌日にクレヨンを持たせて、「昨日掘ったお芋さん、どんなだったか描いてみて」といっせいに絵を描かせるのが一般的でした。でも、最近の保育では、さまざまな画材や粘土などを用意しておくだけ。それを見た子どもたちが「芋掘り楽しかったなぁ」と思い出して、ちょっと描いてみたいなあ、作ってみたいなあ、となるのを待つのです。このように、子どもたち自らが関わっていくことを今の保育はとても大事にしています。