「消極的安全」では子どもの安全は確保できない

―― 「温室」とは、具体的にはどんな環境を指しますか。

小崎 安全であることが前面に強く押し出され、身の回りに危険なモノがない環境ですね。例えば、公園には私たち親世代が子どもの頃、ジャングルジムがありました。同じく、箱ブランコや丸太のブランコである遊動円木もありましたが、事故が多発して危ないということで、今や絶滅危惧種。安全第一というのは大事なことではありますが、その代償として多様な経験・体験が失われていくというデメリットもあるわけです。

 昔は近所の公園で木登りすることは許されていて、危ないけれど失敗を繰り返していく中で獲得する力がありましたが、今はそれが得られない。保育の世界で安全についての考え方の中に、「消極的安全」と「積極的安全」があります。消極的安全は核シェルター的な安全で、危険を徹底的に排除していって安全な環境を作るというもの。一方、積極的安全というのは、分かりやすい話ではナイフの使い方ですね。本来、ナイフを子どもが扱うのは危ないけれど、ある程度の危険を予測しながらうまく使いこなせるようにすることで、ナイフでケガをするリスクを減らすことができます。消極的安全な環境を整備するだけでは、多様な経験ができないし、それでは子どもの安全を確保できません。そうしたことが、今の教育の中で大きな問題となっています。

 保育の現場に任せるだけでなく、親もある程度のリスクを覚悟して積極的安全環境を作り、子ども自らが安全を意識していくようにしていかなければなりません。無理をさせない、危険なところに近寄らせないといった温室環境で育ててしまうと、やはり、身体的にも精神的にも弱さが目立つようになってしまいます。一度コケただけで負けと考えてしまうので、二度と挑戦をしなくなりますし、極端に失敗を恐れるようになります。一方、数多くの失敗経験を重ねている子は、コケても「今回は失敗したけど、次はうまくやれる」「別のやり方を試したらうまくいくかも」と考えることができます

 私の感覚では、男の子のほうが危険なことをしがちということで、親が危険から遠ざけようとする傾向が強いように思います。子どもが心配な気持ちは分かりますが、過度に危険を避けることの弊害を、ぜひ知っておいてほしいですね。