時に迷い、立ち止まりながらも、自分流の働き方や幸せを模索している働くママたち。今回登場してくれたのは、人事の専門家である文野陽子さん。7歳、4歳、0歳の3児の母親です。新卒から数えて計5社を経て現在フリーの採用コンサルタントとして活躍し、来春には会社の法人化を控えているそう。ここに至るまでには、34歳の若さでの部長昇進、産後の降格人事の末のマミートラックなど、さまざまな経験をしてきたといいます。紆余曲折(うよきょくせつ)を経た中で見いだした自分らしい働き方や、仕事と育児の両立について文野さんに話してもらいました。

(前編)女性初の部長に昇進し、走り出したタイミングで妊娠 ←今回はココ
(後編)産後の降格人事、抜け出せないマミートラック…

◆今回登場するワーママ:文野陽子さん
年齢:42歳
これまでの仕事:信販会社→大手情報メディア→人材会社→グループの人材会社に転籍→別の人材会社に転職→フリーランス
現職:採用コンサルタント
住まい:東京
子ども:7歳の女の子、4歳の男の子、0歳の女の子

◆働き方に迷った理由
第1子の産休からの復帰時の降格人事

◆「わたし流」の働き方をかなえるためにした選択
選んだもの…自分のやりたい仕事を続けること
諦めたもの…組織でのポジション

新卒で入社したのは「1日10社回れ!」の「昭和」企業

 大学では経営学を学び、卒論ではクレジットカードをテーマにしたことから、卒業後は信販会社に就職しました。入社した私を待ち受けていたのは、昭和的な厳しい社風でした。最初は審査業務や営業事務を担当したのですが、毎日退社前に先輩の書類までシュレッダーにかけたり、定時には一人ひとりに「お先に失礼します」と言って回ったりしなくてはなりませんでした。思ったことを口にするだけで女性の先輩に呼び出され「生意気だ」とお説教されることもありました。

 学生時代はラクロス部に所属し、体育会的な厳しさには慣れていたはずの私ですが、さすがにこうした毎日は息苦しく、さらに社内にいても、人の噂話しか聞こえてこない環境からも抜け出したいと思い、同じ社内で営業職に変わりました。

 営業になり外で人の話を聞くことは楽しく、勉強になることが多かったのですが、今度の悩みの種は上司でした。上司は「何がなんでも1日10社は回れ」という根性論タイプで、朝の9時に営業がデスクにいると書類を投げつけられ追い出されるというすさまじさでした。結果的に、社屋を追い出されたものの行き場のない営業担当者同士が携帯で連絡を取り合い、外でお茶をして時間を潰すということが日常化していて、仕事にやりがいを見いだすことができなくなり、2年で退社しました。