時に迷い、立ち止まりながらも、自分流の働き方や幸せを模索している働くママたち。今回登場してもらうのは、農林水産省でキャリア官僚として働く松尾真奈さん。4歳と0歳の男の子の母で、現在第2子の育休中です。自分らしく働くこと、妊娠・育児への戸惑いといった課題をその都度、夫婦会議、シェアハウス育児、育休期間の自分なりのキャリアアップ……といった工夫によって解決しながら自分らしく走り続けてきたと言います。そんな松尾さんのこれまでの道のり、そして母親としての今の思いについて話してもらいました。

(上)官僚ママ、仕事が何より大事な時期に妊娠分かり戸惑い ←今回はココ
(下)シェアハウス育児にもメリット実感 官僚ママの変化

◆今回登場するワーママ:松尾真奈さん
年齢:32歳
これまでの仕事:農林水産省キャリア官僚
現職:農林水産省キャリア官僚
住まい:東京都
子ども:4歳と0歳の息子

◆働き方に迷った理由
1年目に激務で体調を崩し休職したものの、その後は迷っていない

◆「わたし流」の働き方をかなえるためにした選択
選んだもの…母としての覚悟を持ちながら働き続けること
諦めたもの…仕事に自分の持つ全リソースをつぎ込むこと

人生を揺るがした地域おこし事業

 官僚を目指したそもそものきっかけは、大学時代に経験した英国留学でした。英国で古いものや田舎を大切にし、ゆったりと流れる時間を味わう豊かさに出合うなか、改めて日本にある豊かさとは何だろう?と考えるようになりました。それと同時に海外に出たことで、日本人のアイデンティティーに目覚め、卒業後は自分の国のために働きたいという思いを抱くようになったのです。

 帰国後は、英国で感じた豊かさを日本の地方に探りたいと思い、地域おこし事業に参加しました。半年間、自然豊かな山間部にある、10集落で人口200人程度という地域で、半年間地元の人たちと関わった体験は、まさに私の人生を揺るがすものでした。

 私はといえば、大学に入るまで家族や学校・塾の友達に囲まれながら、生活面はもちろん勉強面でもさほど苦労も葛藤もなく暮らしてきました。大学受験を終えると、いよいよ目指すべき目標すらなくなり、特に熱くなれるものも、パッションを感じる体験もない中で、「この先どうやって生きていけばいいのか」というむなしさに似た不安を抱えていました。

 そんな私が、この地域おこし事業で訪れた集落で目にしたのは、これまで生きてきたのとはまるで逆の世界だったんです。集落に生きる人同士が、濃密に関わり合いながら生きる姿に、「人として生きる原風景」を垣間見た気がしました。生きることと隣り合わせの豊かな時間の中で、まさに私が渇望していた生きている実感を味わうことができたのです。

 そんな中で芽生えた「豊かさを抱える地域のために貢献したい」という思いが、私にとって生きるエネルギーに変わりました。豊かな農村の姿を、持続可能な形に変えて守っていきたいという強い思いを胸に、大学卒業後は農林水産省に入省しました。

現場に足を向けることを大事しているという松尾さん。仕事ではさまざまな地域を視察
現場に足を向けることを大事しているという松尾さん。仕事ではさまざまな地域を視察