時に迷い、立ち止まりながらも、自分流の働き方や幸せを模索している働くママたち。今回登場してもらうのは、自宅でピアノ教室を開く一方、ピアノ奏者としても活躍する風戸尚子さん。ストイックに自分自身と闘いながらピアノの練習を続けるなか、一度は演奏する自信をなくしてしまったこともあるといいます、そんな風戸さんのこれまでの道のり、そして母となり変わってきたという今の在り方について話していただきました。

(上)出産を機に専業主婦に ピアノに情熱かける日々一変
(下)育児疲れを癒やした音楽の力 好きを仕事にする喜び ←今回はココ

◆今回登場するワーママ:風戸尚子さん
年齢:34歳
これまでの仕事:ピアノ教室の講師→出産と同時に専業主婦に→自宅でピアノ教室を開く→ピアノ教室と並行して給食関係のパート勤務→さらに並行して演奏活動を開始
現職:ピアノ講師・ピアノ奏者
住まい:千葉県
子ども:5歳と2歳の男の子

◆働き方に迷った理由
ひとつ屋根の下に自宅と職場を持つ息苦しさ

◆「わたし流」の働き方をかなえるためにした選択
選んだもの… ピアノに携わり続けること
諦めたもの… 完璧主義

ママたちをピアノで癒やし、演奏する自信を取り戻す

 出産を機に勤めていたピアノ教室を辞め、専業主婦になりました。次第に育児だけの毎日に物足りなさを感じていくように。何か自分にできることはないか? そう考えたときに頭に浮かんだのは「0歳から参加できるミニコンサート」の開催でした。私にとって音楽とは、単に家で一人ピアノを弾くことではなく、感動を人と分かち合うことです。今、自分と同じように育児に追われ疲れているママたちに音楽の癒やしを届けられたら、きっと私自身も今のモヤモヤした状況を打開できるのではないかと考えました。

 さっそく公民館を借りて周囲のママ友に声をかけ「0歳から参加できるミニコンサート」を実施。集まってくれた10組程の親子を前に、息子をおんぶしながらピアノに向かうと、久しぶりに音楽を楽しむ感覚がよみがえってきました。無料演奏会なので収入にはなりませんが、演奏の機会を得られることが私にとっては大きな価値でした。集まって来てくれたママたちからも「子連れで本格的な音楽が楽しめた」と好評でした。

 その後も子育て支援センターなどにチラシを置き、継続してコンサートを重ねるようになると、30組前後の親子が参加してくれるようになりました。息子が1歳を過ぎてからは、ピアノの下に置いたおもちゃで遊ばせながら演奏をするというスタイルで継続しました。息子がぐずったときは中断もしましたが、こうしたゆるい雰囲気のなかでの演奏会が、集まっている親子にもちょうどいい感じに受け入れられたように感じます。育児に疲れたママたちと共に音楽に癒やされ、あすの育児への活力を養う、そんな時間を持つことができたのが、音楽に携わる者としてとてもうれしかったですね。この演奏会を経て、学生時代に失った、演奏をすることへの自信も取り戻すこともでき、改めて演奏することの楽しさを覚えました。

 そして気づいたのが、主婦として生活をしていると演奏する機会がなかなか持てないということでした。そんななか次男を出産後に、フルートや声楽などを学んできたママ音楽家たちと出会う機会があり、3人で「trifoglio(トリフォリオ)」というグループをつくりました。以来保育園をはじめとする地域の子育て支援施設などで演奏活動を続け、活動は今年で3年目に入ります。最初は演奏することを楽しむボランティア活動でしたが、活動を重ねるうちに、最近では施設サイドからギャラが出る「仕事」としても成立するようになってきています。

今年で3年目になる「trifoglio」での活動。ピアノを演奏しているのが風戸さん(写真:風戸さん提供)
今年で3年目になる「trifoglio」での活動。ピアノを演奏しているのが風戸さん(写真:風戸さん提供)