看護師としての覚悟を決めた瞬間

 私にとって初めての試練となったのは、1年目のある日の出来事でした。目の前の患者さんに突然、心臓マッサージを必要とする不整脈が起きてしまいました。その場にいたのは新人の私一人。本来ならばすぐに心臓マッサージをしながら心臓への電気ショックを与えなければいけない場面です。「医師が来るまでの3分間に何をしたかで患者の予後は大きく変わる」――そんなことは頭では百も承知でしたが、怖さから体を動かすこともできないどころか、声も出せずに立ち尽くしてしまったのです。

 幸いにしてCCUでは全床の患者の様体をモニター管理しているので、すぐに先輩看護師たちが異変に気づいて駆け付け、応急処置をしました。そのとき先輩看護師から言われたのが、「CCUで初期対応をしてもらえず予後が悪くなったら、『入院しているのに何で?』と家族は絶対に納得できない。あなたはまだ新人だけど、『急変です!誰か来てください!』と声を出して助けを呼ばないと看護師としてここにいる役割を果たすことにならない」。看護師として働く上での本当の意味を実感しました。

必死に必要知識を学び、瞬時に行動するための自信を養った

 当時は帰宅後も家で勉強をしていました。体温、血圧といった、患者の病態から体の中でどのような変化が起きているのかを分析し、予測を立てる、といったことを繰り返し、早期に異常を発見できる感度が高まります。そのために必要な知識を学ぶ一方で、救急救命などの研修にも参加し、瞬時に判断し行動するための自信を養っていきました。そのかいあって、その後は前回と同じ状況にあっても、心臓マッサージをしながら「誰か来てください!」と言うことができるようになるなど、一歩ずつ階段を上るようにCCUの看護師として経験を重ねていきました。

 CCUはまさにチーム医療現場です。チームで目標を決め、その目標達成に向かって取り組んでいくという環境は私に合っていたと思います。皆で励まし合いながら一つの方向を見て努力する中で、自分自身の成長を実感できることが、大きなやりがいになりましたし、チームで成長していくということは、その後の私の仕事観においても大事な柱になりました