今、世の中には子育てに関する情報が溢れ、親は何を基準に子どもを育てていけばよいのか悩みます。「でも、子育てで大事なことはたった一つ。それは子どもに自信を持たせてあげることです」、そう話すのは公立小学校で23年間教壇に立ち、たくさんの子どもたちの成長を見てきた教育評論家の親野智可等先生です。本連載では、そんな親野先生が勧める、親も子もポジティブになれる子育てを紹介していきます。

できないことをやってあげるのは悪いことではない

 出勤前の忙しい朝に、何度起こしても起きない子どもにイライラしたことはありませんか? そんなときに思わず「あなたはだらしがない子ね」と言いたくなりますが、「それは絶対にやめてください!」とキッパリ言うのは、教育評論家の親野智可等先生。

 でも、親としては、朝くらい自分で起きてほしいというのが本音。また、周りの子はきちんとできていると聞くと、「どうしてうちの子だけ」という焦りも出ます。親が起こしてあげれば事はスムーズに進むけれど、でもそうしたら子どもがいつまで経っても自立できなくなってしまう。だから、今のうちに厳しく育てなければ……。

 「『子どもができないことを親がやってあげるといつまでも自立ができない子になる』、そう警告する育児書は数多くあります。真面目な親ほどそれを鵜呑みにしてしまい、厳しく育てようとしますが、私はそれは間違っていると思います」

 「毎朝自分で起きてほしい。学校へ行く準備は自分でしてほしい。遊んだおもちゃは自分で片付けてほしいなど、親が子どもに望むことはたくさんあります。また、親からすれば、このくらいはできて当然と思うかもしれませんが、子どもの成長には個人差があり、いくら頑張ってもできないことがあります。周りの子ができているのに、自分の子ができていないと、『何でできないの?』と思ってしまい、つい否定的な言葉を投げかけてしまう親は少なくありませんが、それはかえって逆効果です」