学力はもちろん、豊かな人間性を育てる教育に力を注ぐ立正大学付属立正中学校・高等学校。国語力を高める「R-プログラム」を筆頭に、特色ある教育活動を展開している。馬込に移転した新校舎は5年目を迎え、より充実した環境が整った。同校の今後の教育について、大場一人校長に話を伺った。

仏教主義に基づく教育で「人間力」を磨き高める

――最初に、教育方針をお聞かせください。

大場 本校は、建学の精神を日蓮聖人の人格と教えに置く仏教主義の学校です。校名のとおり、立正(正しさを立てる)を根幹に人間力を高める心の教育を重視し、道徳的な規範となる基本的な生活を大切にしながら「人間力」を磨きます。これからの時代を生き抜いていくには、豊かな人間性とバイタリティーが必要です。その土台となる粘り強さや根気を日蓮聖人ゆかりの身延山久遠寺(山梨県)でのオリエンテーションや宗教の時間を通じて育てています。

 本校には皆勤の生徒が多くいます。学校を休まないこと、遅刻や早退をしないこと、そして一つのことに対してあきらめずにがんばることは、大学生になっても社会人になっても通用する力となります。それと同時に、自分の得意なことを大いに伸ばしてほしいと思います。リーダー教育の重要性が指摘されますが、単に上をめざすのではなく、将来自分が得意な分野、自信を持てる分野で力を発揮し、リーダー的な役割を果たしてもらいたいと考えています。

大学生になっても、社会人になっても通用する力を身につけてほしいと語る大場一人校長
大学生になっても、社会人になっても通用する力を身につけてほしいと語る大場一人校長

将来見据えた力を育てる「R-プログラム」を展開

――特色ある教育プログラムを展開されていますね。

大場 筆頭は、「R-プログラム」という教育プログラムです。「R」は、「Research(みずから進んで調べる力)」、「Read(主張や要点を読み取る力)」、「Report(意思や結果を正確に伝える力)」の頭文字で、人前で話す力とリポートをまとめる力の養成を2本柱にしています。中学の教育で最も大事なのは国語です。国語力を高めなくては、学力の伸びは期待できません。そういった点でも、「R-プログラム」は2020年度からの新しい大学入試にも十分対応できるプログラムだと自負しています。

――実際には、どのような学習を行い、何を学ぶのですか。

大場 主軸となるのは、中1から高1が対象の「コラムリーディング」です。これは、子どもたちの読書離れ、文字離れに危機感を抱いて導入したもので、毎朝20分間のショートホームルームを活用して行っています。生徒は新聞や雑誌のコラムを読んで自分の意見をまとめ、書いた内容をクラス全員の前で発表します。クラスの代表が出場する年1回の弁論大会のレベルの高さからも、日々の取り組みの成果を実感しています。理解できる、文章が書ける、人前で話ができるということは、社会人にとって不可欠な力です。一朝一夕には身につかないものだけに、しっかり鍛えていきたいと思います。

 もう一つの軸は、読書活動です。図書館と連携しながら、読む習慣を身につける「読書ノート」や、クラス対抗で読書量を競う「リーディングマラソン」を活用して読書へのモチベーションを高めています。通学電車での時間などを利用して、驚くほどたくさん本を読んでいる生徒もいます。

「読む・聞く・話す」を6年間毎日行うことで身につく力は計り知れない
「読む・聞く・話す」を6年間毎日行うことで身につく力は計り知れない

中1から幅広く実践するキャリア教育と英語教育

――キャリア教育は中1から導入されていますね。

大場 どういう道に進むのか、そのためにどういう勉強をしなければいけないのかということを、中学生のうちから考えてほしいからです。中1では「職業講話」と題して卒業生の仕事の話を聞き、中2・3では企業や学校、病院などで「職場体験」を行った後、その内容を壁新聞にまとめて文化祭で発表する取り組みを続けています。こうした体験をしたうえで、高校では、まず進学したい学部・学科を決めることから始め、大学名などによって漠然と進路を選ぶことがないようにしています。

 進学先としては、中高一貫で学んだ生徒は大半が外部の大学に進みます。国公立大、難関私大への合格者も、一貫教育を受けた生徒がほとんどです。全員が志望校に合格できるよう、高校では講習や補習を充実させ、高3では夏だけでも4週間の志望校別講習を行っています。一方で、成績がふるわない生徒には指名制補習を中1から実施するなど、積み残しをつくらない工夫をしています。

――英語教育にも力を入れていますね。

大場 中学では英語の授業が週に6時間、英会話の授業が週に2時間あります。英会話の授業は1クラスを3分割して3人の外国人教員が指導。少人数で発話を多くして、リスニング力、スピーキング力を向上させています。中3では全員が英語で3分間スピーチができるまでになり、その様子をビデオで撮影して文化祭で流しています。また、海外語学研修も30年以上前から実施しており、中3から高2の希望者が毎年夏休みにイギリス、アメリカへ20日間の研修に出かけています。さらに今年3月からは、中1と中3の希望者を対象にブリティッシュヒルズ(福島県)でのイングリッシュキャンプをスタートするなど、海外に行かなくても英語力を試す機会を提供しています。

職場体験後、壁新聞にして発表
職場体験後、壁新聞にして発表
アメリカ・ロサンゼルスでの海外研修
アメリカ・ロサンゼルスでの海外研修

一人ひとりが望む進路へ伸び伸びと学べる環境

――生徒と教師の距離が近いことも大きな特徴だと伺っています。

大場 本校は、できる生徒だけを伸ばす学校ではありません。全員を大事に育てていくために、生徒一人ひとりに細やかに対応しています。コミュニケーションを大切にしたいので、校長室に中1生を順番に6人ずつ呼んで昼食を楽しんだり、中3生に1対1の個人面談を行ったりしています。また、家庭と協力しながら生徒を育てていく土壌もあります。PTA活動の一環として保護者対象のカルチャースクールを開講するなど、保護者と学校の関わりは密ですね。

――最後に、受験生にメッセージをいただけますか。

大場 本校では、入学した全員を希望進路へ導くことをめざしています。2013年に完成した新校舎は、生徒がゆとりを持って安心して過ごせるよう設計しました。体を鍛えることも大切ですから、グラウンド、アリーナ、プールといった体育施設も充実させています。今夏には、全教室で電子黒板と無線LANの配備が完了します。すでに主要教科でデジタル教科書やタブレットを活用していますが、今後、さらに生徒の意欲やモチベーションを喚起するICT教育を推進したいと考えています。同時に、アナログ的な対話を重視して、しっかりしたコミュニケーション力を身につけさせたいとも思います。本校は楽しく明るい学校です。本校での学園生活を通して、自分の可能性を大きく伸ばしてほしいと思います。

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