女子教育のパイオニアとして創立80周年の節目を迎えた八雲学園中学校高等学校。時代に先駆けたグローバル教育と豊かな心を育てる人間教育を実践してきた伝統校は、2018年4月に共学化を果たし、新たな取り組みをスタートさせています。次世代のグローバルリーダーの養成をめざす同校の教育の特色について、校長の近藤彰郎先生にお聞きしました。

八雲学園中学校高等学校 理事長・校長<br>近藤彰郎先生
八雲学園中学校高等学校 理事長・校長
近藤彰郎先生

伝統の女子教育を男子にも。今春から男女共学化

 男女共学校に移行した今春、八雲学園では男子生徒36名を含む共学一期生を中学校に迎えました。「心配していた違和感はまったくなく、男女とも実に楽しそうに和気あいあいと過ごしています」と、近藤彰郎先生はにこやかに語ります。共学化の背景には、「男女がともに活躍することが求められる時代。中学・高校の段階から一緒に学ぶ場をつくったうえで、生徒をきめ細かくサポートする本校の教育を男子にも提供したい」という強い思いがありました。一人ひとりに手を差し伸べて支え、成長を後押しする教育は、80年の歴史とともに誇る同校の伝統。その実践を男子にも広げる環境が整ったと自信を見せます。

 たとえば、学校行事もその一つ。行事を生徒の成長の機会ととらえている同校では、遠足や合唱コンクール、体育祭、文化祭など、一年を通して大小さまざまなイベントを用意しています。男子生徒が入学した今年は初めて端午の節句を祝いました。恒例になっている桃の節句と同様に、学校の玄関に鎧兜を飾り、生徒たちに柏餅を配りました。「健やかな成長を願うこちらの気持ちを生徒たちもしっかり受け止めて、『おいしかった』『先生、ありがとう』と喜んでくれました。小さなことですが、こうした場面の一つひとつを大事にしていきたいと思います」

共学1期生の生徒たち
共学1期生の生徒たち

ICT教育と八雲式PBLで問題解決力と発信力を強化

 共学化に際して、中高6年間のカリキュラムは一新し、2年ずつの3ステージ制を導入しました。中1・2で基礎的な学力を習得、中3・高1で海外研修や留学プログラムを体験、高2・3で受験指導体制を確立と、ステージごとに工夫したプログラムで学力を向上させ、希望の進路の実現をめざします。

 いち早く取り組んできたICT教育やアクティブ・ラーニングも進化が続きます。生徒は1人1台のタブレットを持って教科学習で活用するほか、電子黒板を利用した授業も活発に行われています。また、主要5教科ではすべてに問題解決型学習(PBL)を採用しました。タブレットを使った調べ学習やプレゼンテーション資料の作成、パワーポイントによる発表などを通じて、生徒がみずから課題を発見・探究して問題を解決する力や、自分の意見を他者に伝えるプレゼンテーション力を鍛える能動的な学習を実践。多様化する大学入試にも対応しています。

 クラス担任とは別の教員がチューターとなって一人ひとりの生徒を受け持つ制度も整えています。学習面でのアドバイスを中心に、日常生活の悩みや不安に対する相談も受け、学校生活を個別にサポートしています。

アメリカ西海岸のサンタバーバラにある研修センター「八雲レジデンス」
アメリカ西海岸のサンタバーバラにある研修センター「八雲レジデンス」

高度な英語力が身につくグローバル教育を実践

 創立時からの柱であるグローバル教育にも一層の磨きがかかっています。レシテーションコンテストやスピーチコンテストといった英語関連行事の充実をはじめ、アメリカ・カリフォルニア州サンタバーバラには研修センター「八雲レジデンス」を開設。中3生は全員、ここで2週間の海外研修を行っています。高1になると、3か月間のアメリカ留学に加えて事前学習と事後学習を含めた「9カ月プログラム」を実施。留学中は、中3での海外研修と同様にカリフォルニア大学サンタバーバラ校で授業を受け、現地での交流を深めます。参加した生徒は外国語能力の参照標準「CEFR(セファール)」で全米トップ校が求めるB2レベルの力をつけるなど、成果を挙げています。

 さらに2017年4月には、世界50か国の私学180校が所属する国際私立学校連盟「ラウンドスクエア」に加盟しました。それを機会に国境を越えた交流が一気に広がり、校内には常に留学生がいる状態に。また、各国の加盟校に留学する生徒も増えました。

 一方、日々の英語の授業では、大学受験だけを目的にせず、「使える英語」を重視。「英語を苦手にさせない」をモットーに、習熟度別授業や帰国生対象の取り出し授業を実施するほか、日々の小さな積み上げを重視。「Today’s Words」と題したプログラムで、一日3つずつ単語を覚え、中学3年までに1800語を着実に身につける取り組みを続けています。

UCSBでの授業
UCSBでの授業

多彩なプログラムが揃う文化体験で感性を磨く

 同校では、月に一度の文化体験の日には、ミュージカル、美術鑑賞、鎌倉散策など、国内外のさまざまな文化に触れることで、感性を磨き、豊かな人間性を育んできました。「これも本校の伝統です。大切に継承してきたものを守りつつ、新たな革新を加えて、世界で活躍できる次世代のグローバルリーダーを育てていきたいと考えています」。

 ラウンドスクエア加盟校や姉妹校、アメリカの名門イエール大学との交流に力を注ぐのもそのため。日本人のアイデンティティーと国際感覚の両方を身につけて、将来は海外に進出するだけでなく、活躍の場が日本であってもリーダーとしての力を発揮してほしいというのが同校の願いです。

 最後に近藤先生は、受験生にぜひ伝えたいと次のメッセージを送ってくれました。「受験はチャレンジです。自分が今できることを一生懸命にがんばってください。八雲学園は生徒一人ひとりを応援する学校です。入学後は、皆さんの将来の目標をかなえるチャレンジをわたしたちが全力で応援します」

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