「もっと甘えたい」「自立しなくちゃ」2つの気持ちのはざまで葛藤

 群馬県で「おやこ心理相談室」を営む臨床心理士の佐藤文昭さんは、「反抗期は、子どもの成長の証です」と断言します。

 「臨床心理学の分野では基本的に、2歳前後から始まるイヤイヤ期と思春期は、両方とも『反抗期』と認識されています。表現の種類は異なりますが、これらが起こる背景は同じこと、そして両方とも大事な成長過程の一つだということです」(佐藤さん)

 どちらの反抗期にも共通するのは、子どもが自身の体の成長を認識したことを機に親から自立しようとして起こるという点です。

 「まず、2歳ごろの反抗期は、自我の芽生えの時期です。この頃になると、父母と自分の存在が別のものだと分かってきます。そして、いろんなことを自分でやりたいと思うようになります。

 思春期のほうはというと、体が大きく成長する『第二次性徴期』です。それまでは、親にスキンシップなどをして甘えてきたけれど、それに違和感を覚え始め、『もうこれ以上甘えられないぞ』と思うようになるんです。しかし、本当はもっと甘えたい、でも自立しなきゃ、でも一人でやっていけるかなという不安、それらの気持ちがないまぜになっている状態。そして、親に秘密を作ることで自立を試みたり、もっと甘えたいという誘惑を断ち切るように、親を突っぱねて離れたりしようとします」(佐藤さん)

写真はイメージ
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 到来する時期については、個人差が大きいと佐藤さんは言います。「イヤイヤ期がずるずる長引いて、年中や年長、小学校低学年くらいまで続くこともありますし、思春期の反抗期が低年齢化して、3年生や4年生くらいから始まるケースも増えています。低年齢化は、スマホやパソコン、多くのメディアなどが取り巻く環境で育ち、情報過多になってきているためだと考えられます。多くの知識を早期に得ることで、親に秘密を作るという行為に拍車が掛かってきているんでしょうね」(佐藤さん)

 子どもたちを取り巻く環境の変化が、育児をさらに複雑にしているようです。「今は俗にいう反抗期の年齢ではないから、うちの子は反抗期ではない」などと一くくりに考えるのではなく、子どもの様子に目を向け、自立に向けた反抗期なのか、はたまた別のメッセージなのか、見極めることも必要なようです。

 「これがなければ、子育てはどんなに楽なことか」と、忌み嫌われがちなイヤイヤ・反抗期ですが、「親がイヤイヤ・反抗を力ずくで抑え付けたりすると、子どもに取り返しのつかない弊害をもたらすこともぜひ覚えておいていただきたいポイントです」と佐藤さんは警鐘を鳴らします。どういうことなのでしょうか。