虐待を受けた子を里子として育てた夫婦に里親体験を語ってもらった前回に引き続き、 今回も「里親」について取り上げます。
里親というと、里子が大人になるまで引き取って世話をすると思われがちです。しかし児童養護施設で暮らす子どもを定期的に数日間、自宅に迎えたり、実親の養育が難しい一時期だけ子どもを預かったりする、短期の里親という選択肢もあるのをご存じでしょうか。
厚生労働省は、実の両親の元で暮らせなくなった子どもを、児童養護施設から家庭的な環境へ移す方針ですが、受け入れる側にとって長期で子どもを迎えるのは重い決断です。一方、週末などの一時預かりは、親戚の子を数日泊めるのと似た感覚で始められることから、里親を増やすためのアプローチとして注目されています。何年にもわたり、定期的に数日間ずつ里子を受け入れている里親女性の思いを紹介します。
「普段の生活」大事に 「三日里親」細く長く寄り添う
「家でジュースを飲んだり、大人の晩酌のつまみを一緒に食べたりしながら、ああだこうだと話をする。そんな『普段の生活』が、彼にとって心休まるときなんじゃないかと思います」
神奈川県内で「三日里親」を14年間続ける女性(56)は、そう話します。2歳半から定期的に預かり続けている男の子は、もう16歳。普段は児童養護施設にいますが、月1度、週末に3日ほど家に泊まりに来ます。
女性は、児童虐待防止に関心を持ったのをきっかけに、里子を迎えたいと考えるようになりました。しかし当時は2人の実子が幼く、家の間取りなどを考えても長期の里子を迎える余裕はありませんでした。すると児童相談所から「三日里親ならできるのでは」と勧められ、引き受けたといいます。
里子が泊まりに来たら遊園地に連れて行ったり、一緒に地元のお祭りに参加したり。家で庭の草取りや料理を手伝ってもらうこともあります。「できるだけ心地よく過ごしてもらおうと思っていますが、家族の一員としての役割も果たしてもらうようにしています」
里子の入学式、卒業式など折々の行事にも出席しています。「運動会では照れて、すねたような態度を取っていましたが、競技の間きょろきょろと私たちを探している。やっぱり求められているんだなあと思いました」と、女性は振り返ります。