児童養護施設の職員は基本的に常に働いているので、施設の子どもたちは、大人がテレビを見ながらごろごろしたり、昼寝したりしてくつろぐ姿を目にすることがありません。三日里親は、こうした「家庭の日常生活」を体験する場でもあります。

 また施設の職員は、数年おきに転勤してしまうことがほとんど。女性は「私たちは1人の子に細く長く寄り添い、褒めて励ますことができる。里子が別の施設に移ったときも変わらず会いに行き、児童相談所から『おかげで彼が精神的に安定した』と言われたこともあります。長期里親でなくても、役に立てるという発見がありました」と話しました。

 里子の男の子は、そろそろ進路を決める時期です。大学などへ進学しなければ18歳で施設を出なければいけません。女性の一家は施設を出てからも、彼と交流を続けるつもりだといいます。「施設に守られなくなってからのほうが、大変なことがたくさんあるはず。困ったときに、相談できる相手でありたいと思っています」

「人生丸抱え」の高いハードル 短期の里親増やせば裾野広がる

 虐待や親の失踪・死亡などで児童相談所に一時保護された子どもの数は2016年度、約4万人に上りました。このうち半数が家庭へ戻されて、約2割が児童福祉施設に移り、里親が引き受けた子どもは1400人弱、全体の3.4%にすぎません。

 短期の里親に関する情報提供と啓発を目的とした一般社団法人「RAC」の千葉彩代表理事は、「里子を迎えるというと、完全に実親との縁を切る特別養子縁組や長期の養育里親など、『家族として受け入れる』関わりに目が行きがちです」と指摘します。しかしこうした長期の里親になることは、子どもたちの人生を丸抱えにするという、大きな決断を迫られます。心身に傷を負った被虐待児の場合、ハードルはさらに高くなりがちです。

 一方、定期的に数日間預かる形なら、負担感が比較的軽くなります。里子を迎え入れる頻度も里親家庭のペースに合わせて数カ月に1回、毎週など定められるので、無理なく支援を続けられます。千葉代表理事は「血のつながらない子であっても年に数回、夏休みやお正月に遊びに来ていれば、親戚に近い存在になるのではないでしょうか。短期の里親は、『親になるんだ』と気負うことなく踏み出せる支援です」と訴えます。

 三日里親の女性も「なるべく多くの子どもが家庭的な環境を体験できるよう、まずは短期の里親を増やして裾野を広げるのが先決ではないでしょうか。交流する中で気心も知れ、この子なら長期里親になってもいい、養子縁組をしてもいいという家庭が自然に出てくると思います」と話します。

子どもを里親に一時託して虐待親へ介入 暴力エスカレートする前に

 また千葉代表理事は「子どもが虐待されたとき、地域の里親に一時期だけその子を託して親を支援することができるようになれば、虐待の深刻化を食い止める効果も期待できます」とも話します。暴力がエスカレートして決定的な親子分離に至る前に、親側の虐待に至る要因を取り除くことが狙いです。同じ地域内の「一時預かり」なら、親も子どもを奪われることへの抵抗感が薄れ、同意しやすくなるといいます。