激しい虐待などで、実の親と暮らすことが難しくなった子どもは、児童福祉施設や里親に託されます。政府は家庭的な環境で子どもたちを育てられるよう、施設での養護から里親への移行を進める方針です。しかし里親など、家庭的な環境で育てられている子どもは、2016年度末の全国平均で18.3%にすぎません。

 子どもたちの傷を癒やし、育て上げるのは容易なことではありません。 虐待を受けた子を含め5人の里子を育てた秋山三郎さん、恵美子さんに里親体験を語ってもらいました。 1人でも多くの子どもが愛情を注がれるために今必要なこととは。30年を超える里親経験から秋山夫妻が今感じていることを教えてもらいました。

暴力、ネグレクト受けた子引き取る

 秋山さん夫妻は東京都内在住。子どもを授からず、1987年に3歳の女の子を最初の里子として引き取りました。彼女が中学生になってから、2番目の里子として迎えたのが、実親から暴力やネグレクト(育児放棄)などの虐待を受けていたタケシ君(仮名)です。当時、6歳でした。

虐待を受けた子を含め5人の里子を育てた秋山三郎さん、恵美子さん夫妻

 「足の付け根やおなかに、たばこの根性焼きのようなやけどがあり、肋骨のあるべき部分がへこんでいました。骨の柔らかい乳幼児期に殴られるなどして折られ、そのままになってしまったようです」(恵美子さん)

 タケシ君の母親は10代で妊娠し、タケシ君の実父とは離別。その後、別の男性と暮らし始めましたが、けんかの絶えない生活だったと、後にタケシ君自身が語っています。タケシ君は深夜、一人で何度も自宅近くのコンビニエンスストアへ行き、賞味期限の切れた食べ物をもらうなどしていました。これがきっかけで虐待通報が入り、児童相談所に保護されて児童養護施設で暮らすようになりました。「児相に保護されたとき、自宅の冷蔵庫には水しか入っていなかったそうです」と、三郎さんは話します。

 それでもタケシ君は、実母を慕っていました。秋山家と何度も交流を重ねながら、最初は里子に出るのを嫌がったといいます。施設の職員が理由を聴くと、タケシ君は「だってお母さんが迎えに来たとき、僕がここにいないと困るでしょ」と答えました。