自分の子どもに深刻な虐待を加えてしまう親とは、どのような人たちなのでしょう?「毒親」と糾弾するより、彼らを知ることが虐待防止につながるのではないでしょうか。

約20年もの間、加害親の回復支援に取り組んできた森田ゆり氏は、「虐待の裏には、癒されずに放置された『傷つき体験』がある」と話します。親は深く刻まれた心の傷を乗り越えて、虐待を止めることができるのでしょうか。

深刻な虐待引き起こす「体罰+ストレス+孤立」

 森田さんが開発した「MY TREE(マイツリー)ペアレンツ・プログラム」は2001年から、行政や民間の支援団体によって実施されており、修了生の数は約1300人に上ります。対象者は「子どもに深刻な身体的虐待・ネグレクトをしてしまった人」です。

 受講者の多くは、子どもを殴る、風呂に沈めるといった身体的虐待やネグレクト、「言うことを聞かないと、お母さん死ぬからね」など言葉による支配を繰り返した人で、児童相談所などの紹介でプログラムを受講します。中には虐待で逮捕・起訴された人もいます。

 彼らのほとんどは、子ども時代の虐待やいじめ、親の自殺などさまざまな傷つき体験を抱えています。成人後にパワハラやDV、レイプなどの性暴力を受けた人も多いといいます。

 さらに、貧困や夫婦関係の悪化などのストレスが重なると、虐待のリスクは一層高まります。義父母の過干渉もその1つで、「言って分からない子なら、たたくしかないだろう」と義父に責められた母親が子どもをたたき始め、あっという間に激しい暴力へエスカレートしたケースもあったといいます。子どもの多動傾向や、赤ちゃんが泣きやまないなど、親にとっての「育てにくさ」も、ストレスとなり得ます。

 孤立した中での子育ても、虐待の要因です。「受講者の中には、3人の子どものうち1人を虐待で死なせてしまった女性がいました。長距離運転手の夫は週6日勤務で、家では寝るだけです。日本の異常ともいえる長時間労働を是正しない限り、行政がいかに支援を充実させても、孤立を完全に防ぐことはできません」と、森田さんは話します。

次ページから読める内容

  • 「あの子が私を怒らせた」怒りの裏には悲しみがある
  • 加害者の回復支援には司法の強制力が必要
  • 「体罰もときには必要」世間の認識が虐待死を生む
  • 周りの人の共感が、虐待しない大人へと導く

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