事例の2~3割は、既に他の組織から「この家庭は心配だ」と注意喚起があったり、支援が実施されたりしていたのです

 救急外来の小児科医が「全く問題ない」と判断した中でも、実際は非常にリスクの高い家庭が存在したといいます。「初めての情報提供より、2回目のほうがリスクは高いと判断されやすく、市町村の対応が変わります。ささいなものであっても情報が蓄積されることが、虐待がエスカレートする前の支援につながるのです

現代の「コミュニティー」づくり

 実は筆者も目下、モヤモヤを抱えています。といっても、近所の子どもがよく1人でコンビニ弁当を買っているだけです。頻繁に顔を合わせるので、つい気になってしまうだけでしょう。

 「コンビニ弁当、何か問題でも? いえいえ、うちでもよく食べます。全く文句ないです。手作り礼賛派でも何でもありません。うちの子、コンビニおにぎりのほうが私のよりおいしいそうです」と、毎回心の中で葛藤し、納得したふりをしています。でも小橋医師は言いました。不安が1つでもあれば、それを見逃さないでと。

 講演後、状況を話してみると、小橋医師は顔を曇らせ「それは気になりますね」。半分ホッとしつつ、ではどうすればいいでしょう?

 「まずは、その子にあいさつしてください」

 一瞬、それだけ?と思いました。しかし先生は言います。

 「あいさつから始めて、『1人で買い物、えらいねえ』などと話しかけ、少しずつ関係を築いてください。『向こう三軒両隣』で一緒に子どもを育てた昔には戻れませんが、現代の生活に合ったコミュニティーをつくることが、子どもを救うのにとても大事です

写真はイメージです
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