これはそれほど難しくありません。いつも考えていることですから。

  • ● テレビを消す
  • ● 朝ごはんを早く食べ終わる
  • ● 歯磨きをする
  • ● 道具をそろえて、スムーズに身支度をする
  • ● 靴下と靴をはく など

 「そうですよね。今挙げてもらったのは育児における『短期的な目標』です」

ストレスが高まると“感じる脳”が優位となり感情的に

 「お父さんやお母さんがお子さんに向かって怒鳴り散らしたり、脅かしたり、ときにはたたいたり、口うるさく言ったりしてしまうのはストレスが高まっているときですよね」

 「これらの反応には実は脳の作用が関係しています。私たちの脳には“感じる脳”(大脳辺縁系)と、“考える脳”(大脳皮質)があります。ストレスがない状態だと“考える脳”が働きやすく思慮深い対応ができますが、ストレスが高まると“感じる脳”が優位となり、衝動的な反応をしやすいというわけです

 「お父さんやお母さんが“感じる脳”で子どもの言動に反応するかわりに、“考える脳”を使った対応ができたほうが子どもにも教えたいことがきちんと伝わりそうですよね。子どもが20歳になったとき、どんな人になっていてほしいでしょうか。どんな親子関係を築いていたいでしょうか。私たちはその目標に向かって日々子育てに励んでいるのだと思いませんか」

 森さんはこう続けました。

 「最も身近な大人であるお父さんやお母さん、場合によっては、おじいちゃんやおばあちゃんなど家庭の対応は、子どもの学びに影響を与えます。例えば、私たち大人が怒鳴ったり、たたいたり、脅かしたりすることを通して子どもにものごとを伝えたとしたら、私たちは課題を解決する方法の一つの見本(モデル)として子どもにそれを見せているともいえます」

 「また、子どもに恐怖や不安を覚えさせて教えることは、信頼関係を損なったり、子どもの自己肯定感を下げたりすることにもつながり得ます。ですから、遠回りに思えても、まずは、お子さんにどんな人に育ってほしいのか、自分とどんな関係を築いていきたいのか、という『子育てにおける長期的な目標』を確認し、それを道しるべとして対応を考えていくことが大切だと考えています」