電車内や路上、人の集まるイベントなどで、親に怒られて泣いている子を見かけたら、あなたはどうしますか? 声を掛けてあげたい、断られたらどうしよう…。いろんな思いが駆け巡った末に、行動を起こせない人も多いのではないでしょうか。子どもにほほ笑みかけるくらいしかできなかった、という経験談も多く聞きます。

「周りには大勢の人がいるのに、誰も助けてくれない」。そんな母親の孤独感を和らげることこそ、虐待を防ぐ第一歩です。子育てアドバイザーで、多くの子育て支援団体の役員を務める高祖常子さんと、虐待予防に取り組む団体「ママリングス」代表の落合香代子さんに、どんな行動を起こせるのかを聞いてみました。

顔を向けただけで「にらまれた」と思い込んでしまうことも

・まず「私は怒ってないよ」とスマイルでママにアピール
・誰でもできる「ガッシャン!」で親を冷静に
・簡単だけど効く「パクパク」と「グーパーグーパー」
・「シール・折り紙・風船」をバッグに常備

 「ほほ笑むことも、助けになるんですよ」。高祖さんはまず、こう話します。「切羽詰まった母親は、周りの人が泣き声のする方へ無意識に顔を向けただけで『にらまれた』と思い込んでしまうことがあります。ほほ笑みを向ければ、少なくとも親子に否定的な感情を持っていないことを示せます」

 怒鳴っている親を見かけた時、誰でもできる簡単なアクションがあるといいます。少し距離が離れていたり、電車内でかばんを抱えて座っていたりしても大丈夫。それは「大きな音を立てる」ことです。「持っているかばんや本をわざとバサッと落とす、『ガシャン!』とコップの水をちょっとこぼして『わあ!いけない!』と慌てる、大きい声で話すのもいいかもしれません。意識をこちらに向けて、逆上している親が、ふと我に返るきっかけを作るのです

 もちろん、親が気付かない可能性もあります。しかし直接親子に働きかける必要がない分、気楽に試せる方法でしょう。

 もう一歩踏み込む場合、親より子どものほうがアプローチしやすい、と高祖さんは言います。「子どもの目の前で、親指と他の四本指をパクパク開閉したり、グーパーグーパーしながら手のひらを左右に動かしたりするだけでも、結構注目してもらえます。『いないいないばあ』でもいいですね。泣いている子が『何?』と気分を切り替えてくれたら成功です」