社会的に児童虐待への危機感が高まるなか、親の体罰を禁止する改正児童虐待防止法が成立し、4月1日に施行されました。国際NGOの「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」が3月に開いた集会の様子と厚生労働省が示したガイドラインの具体的な内容をお伝えします。

「言うことを聞かない子のほおをたたく」は体罰?

 今回の法改正で最大のポイントは、親による体罰が禁止されたことです。

 「どこまでが体罰で、どこまでがしつけ?」と悩む親もいるかもしれません。答えは「どんなに軽い暴力も体罰」です。

 厚生労働省は法改正を受けて、体罰によらない子育てのためのガイドラインを作り、「子どもの身体に何らかの苦痛、不快感を意図的にもたらす行為は、どんなに軽くても体罰に当たる」と定義しました。言うことを聞かない子のほおをたたく、いたずらした子に長時間正座させる、宿題を怠けた子の夕ご飯を抜くなどは、すべて体罰として禁じられます。

 ガイドラインはさらに、子どもの世話をしない「ネグレクト」や、子どもの目の前でパートナーに暴力を振るう「面前DV」は児童虐待に当たることを明記しました。「お前なんか生まれてこなければよかった」などと子どもに暴言を吐いたり、怒鳴りつけたりするのは権利侵害に当たることも説明しています。

 ガイドライン作りに参加したNPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事の高祖常子さんは、「暴言を含む、どんなに軽いものであっても、すべての体罰は許されないと明確にできたことに大きな意味がある」と話しました。

 また、日本弁護士連合会子どもの権利委員会の幹事を務める弁護士の相川裕さんは、法改正について「深刻な虐待が氷山の一角だとすると、氷山(体罰の総数)そのものを小さくし、なくしてしまう」ためのアプローチだと説明しました。

子どものしつけはどうすれば?

 子どもをしつけなくていいのか? と思う親もいるかもしれません。セーブ・ザ・チルドレンで子ども虐待の予防事業を担当する岩井さくらさんは「体罰を加えないことは、甘やかすことや、危険に陥った子どもを放置することでは決してないと、丁寧に説明する必要がある」と強調します。

 改正法には、衆参両院から付帯決議として「子どもに手を上げてしまった保護者を追い込むのではなく、適切な子育てができるよう支援すべき」との注文が付きました。「たたかず子どもをしつけるには、どうすればいいの?」という親の問いに、きちんと答えるべきだというわけです。

 このためガイドラインには、たたかない子育ての具体的なポイントが盛り込まれました。