社会の意識変革が最大の難関

 最も重要で、また最も難しいのが「体罰はいけない」という社会規範をつくることです。

 セーブ・ザ・チルドレンの2017年のアンケート調査では、回答者2万人のうち約6割がある程度の体罰はやむを得ないと回答しており、体罰容認派がまだ多数を占めています。

 改正児童虐待防止法は、親による体罰禁止を定めています。ただ、NPO法人国際子ども権利センター代表理事で文京学院大教授の甲斐田万智子さんは、教師やスポーツ指導者らにも、体罰は横行していると指摘します。「目的達成のためには、力ずくで子どもを望む方向へ仕向けても構わないという意識が日本社会には根強い。根本的な解決のためには、子どもの問題解決能力を信じ、一人の人間として尊重する意識を浸透させる必要がある」と語りました。

 また、セーブ・ザ・チルドレンの岩井さんは「子ども自身に、暴力から守られる権利、意見を発信する権利があることを周知することも非常に大事」と訴えました。

 国連子どもの権利委員会は、日本政府に対して繰り返し、体罰の撲滅に向けた啓発キャンペーンを強化することなどを求めています。2019年にも勧告が出されました。

 甲斐田さんは「体罰への日本政府の対応は、グローバルスタンダードから大きく後れを取っている。『子どもはたたかなければ分からない』という考えを拭い去るため、社会全体を巻き込んだアクションが必要だ」と強調しました。

取材・文/有馬知子 イメージ写真/PIXTA