例えば、親が「出かける支度をして」と言っても、子どもは何から手を付ければいいか分からないことがあります。まず「出かける時間だね。そろそろこの服に着替えよう」と呼び掛け、着替えが終わったら「自分でちゃんと着替えられたね。じゃあ、次はカバンを持ってきてください」と促すなど、「やることを区切って、やりやすいことから具体的に伝える、できたことに注目してそれを伝える」ことが有効だとしています。

 「座って」と言っても従わない子は、自我が芽生えて指示に反発しているのかもしれません。「床か椅子か、どちらかに座ってね」と選択肢を示し、意思を尊重することを提案します。

 また危険を防ぐため、道に飛び出しそうな子どもの手をつかむ、他人へ暴力を振るおうとする子どもを止めるなどの行為は、体罰に当たらないとも明記しています。

 子どもに怒りをぶつけてしまいそうになったら、ゆっくり5秒数える、自分自身を振り返ってストレスの原因を見極めるなど、親自身の感情コントロールの方法も示されました。

59番目の「体罰全面禁止国」に指定 残された課題とは

 国際NGO「子どもに対するあらゆる体罰を終わらせるグローバル・イニシアチブ」は法改正を受けて、日本が世界で59番目の「体罰全面禁止国」になったと発表しました。しかし集会に参加した専門家からは、まだ数多くの課題が残されているとの意見が相次ぎました。

 一つは、暴言による心理的な暴力が、法律の中で体罰として明示されなかったことです。正当な叱責と、不当な言葉掛けの線引きについて、国民的な合意ができていないなどとして、法律に盛り込むことが見送られ、ガイドラインでの言及にとどまったのです。

 しかし、暴言や「面前DV」が脳にダメージを与えることは、科学的にも証明されています。集会に参加した国会議員からは「科学的根拠に基づいて政策をつくるべきだ」との意見が出されました。

 また民法には、親が必要な範囲で、いましめのために制裁を加える権利(懲戒権)が残されています。懲戒権が「しつけ」の名を借りた体罰の口実になっているとの指摘があり、現在、政府内で見直しが検討されています。

 体罰禁止を「絵に描いた餅」にしないため、たたかない子育てを伝えることも大きな課題です。

 高祖さんは、親から乳幼児への体罰を減らすことが「子どもが体罰を学ばずにすみ、将来的に社会の暴力を減らすのに有効」だと強調します。ただ幼い子どもを持つ親の多くは、複数回の子育て講座を受け続けるのが難しいとも指摘しました。

 「1時間半の講座を受けるだけでも、親の体罰に関する意識は改善された。まずは1回で終わる基礎的な講座を、すべての親に受講してもらうのはどうか」と提案しました。