共働き子育てメディア、日経DUALとして初めて「夫婦」そのものに向き合う特集です。夫婦は、私たちにとって当たり前の存在だからこそ、ついないがしろにしがち。でも、ないがしろにしすぎると、共働き生活の根底を揺るがせるリスクにもなりかねません。また、夫婦生活がうまくいっていると子育てと仕事の両立がスムーズにいきやすいという事実もあります。共働き世帯が専業主婦世帯を抜き、“人生100年”時代に突入するという私たち世代には、これまでにない「夫婦像」を形作っていかなければいけないという使命があります。その一助となるべく、本特集を企画しました。第4回は、夫婦問題カウンセラーの高草木陽光(たかくさぎ・はるみ)さんに、共働き子育て夫婦が陥りがちな「危機」と、それをどう予防し、またはどう乗り越えていくべきかを語っていただきます。

【DUAL世代の“夫婦道~ふうふどう~”特集】
第1回 りゅうちぇる「いちいち伝え合う」のが僕とぺこりん
第2回 共働き夫婦の75.9%が「幸せ」!鍵を握るのは?
第3回 共働き「今の配偶者と一生連れ添いたい」75.3%
第4回 不毛なケンカよりも賢い議論を 仲良し夫婦の極意 ←今回はココ
第5回 「夫婦とは」心療内科医が分析 共働きの子育て後は
第6回 子の頑張りを共に応援できるかが夫婦円満の分かれ道

「家事も育児も結局、私ばっかり」という女。「また説教?」という男

 「HaRuカウンセリングオフィス」代表で夫婦問題カウンセラーとして、これまで7000件以上の夫婦カウンセリングを行ってきた高草木陽光さん。「最近は共働きの方からの相談も増えています」。相談者の男女の割合は、「女性が若干多いですが、大体、男女半々です」と語る高草木さんは、「夫婦の危機は、大まかに言って5年目、10年目、20年目に訪れる確率が高いです」とバッサリ。

 最初の危機は、結婚後2~5年目に訪れる場合が多く、その背景には「新婚の緊張感が解け、夫婦ともに“素の自分”をさらけ出し始めたことによって問題が明るみに出てくる」ことがあるそう。特に、共働き子育て中の夫婦の場合は、第一子が誕生し、初めての妊娠・出産・産休を経験したころ。育休が明けて職場復帰し、時短勤務あるいはフルタイムで、仕事と家事・育児の両立でフル回転を始めている辺りです。このころの妻は「家事も育児も結局、私ばっかり。なんであなたは何もしてくれないの?」、夫は「また説教? 毎日ガミガミ言われる、俺の身にもなってほしいよ」というものが代表的だそう。

 結婚後10年目ごろの危機は、「子どもが小学生になって子育てが一段落し、妻が周りを見る余裕が生まれる」というのがきっかけであることが多いようです。「妻は、例えば、時短勤務からフルタイムに戻り、仕事に力を入れていきたいタイミング。それなのに、夫が協力してくれないと不満が募ります。また、“頑張り屋のママ”に多いのは、一息ついて過去10年を振り返ったときに、育児も家事も自分が孤軍奮闘してきたことに気づくというケース。『よく考えたら、夫ってお金を稼ぐ以外、ほとんど役に立っていないんじゃない?』と徒労感を覚える人も少なくないでしょう。一方、夫はそんな妻の変化にも気づかない。このアンバランスさが危機を招きます」

 そして、結婚後20年目にやってくるのが「定年退職による危機」。「『子どもも独立し、仕事も卒業。よし! 友だちと一緒に好きなことをしよう!』という妻。『定年後は妻と二人で水入らずで過ごしたい』という夫との間ですれ違いが起こりがちです」

 ここで、高草木さんは言います。「夫婦がうまくいくかどうかは、やはり妻の手に掛かっているといっても過言ではありません」。その心は?

高草木さんへの取材をもとに、日経DUAL編集部が作成
高草木さんへの取材をもとに、日経DUAL編集部が作成
「夫婦がうまくいくかどうかは、やっぱり妻の手に掛かっているといっても過言ではありません」(高草木陽光さん)
「夫婦がうまくいくかどうかは、やっぱり妻の手に掛かっているといっても過言ではありません」(高草木陽光さん)
<次のページからの内容>
● 妻が子育てにとどまらず、“夫育て”までしなければいけない理由
● “夫婦はチーム”。夫婦は対立せず、一緒にチームを盛り上げる
● 「お互い、当たり前のことを当たり前にする」ことが一番大事
● 「当たり前の感覚のズレ」への対応は、二者択一で決断を
● 夫には“I message”で。「ありがとう」が言えないなら、「どうも~」でOK
● 高草木さんが最後に聞く“離婚の基準”
● 高草木さんオリジナル【夫の取扱説明書】【「正しいケンカのしかた」チェック】も紹介