ここるく代表取締役の山下真実です。「託児付きランチサービス『ここるく』」を起業したのが6年前。それまでは投資銀行や金融系コンサルで働いていたので、起業して全くの異業種に飛び込んだわけですが、そこから自社のサービスを良くするために保育について研究し始め、気づけば保育オタクに。オタクの目からこの業界を見ていると、「保育関係者ではない普通のママ・パパには、保育園ごとの特徴や良さが伝わりづらい」というジレンマをとても感じます。

そこで本連載では、異業種から保育の「中の人」になったからこそ得られた独自の視点で、本当に良い保育とは何かを、分かりやすく伝えていきたいと思います。

「若い先生ばかりの園は大丈夫?」の疑問が取材の出発点に

 待機児童の数は、2019年度4月時点の数字を見ると、全体的には減ってきているものの都市部の数値だけは依然として高い状況が続いています。それを受けて新しい保育園の開設が進められていますが、保育の担い手となる人材の不足も課題となっています。そんな中、最近よく耳にするのが「若い先生ばかりの園に預けて大丈夫?」という声。筆者自身も子どもを産むまでは全くと言っていいほど子育てに関する知識がなかっただけに、過去には、子育てを経験していない若い保育者がどんな風に子どもに接しているのだろうと気になった記憶があります。そこで今回は、20代の保育者が多く所属している園を訪ねて、その保育内容をじっくり見てきました。

 長野県上田市にある「幼保連携型認定こども園あそびの森あきわ」が今回の訪問先。園舎の目の前には田んぼが広がり、すぐ後ろを山々に見守られた絶好のロケーションは、都内で子育てする筆者にとっては「うらやましい!」の一言です。

エントランスにある掲示板。お迎えに来た保護者にその日の様子が伝わるよう、活動レポートが毎日掲示される
エントランスにある掲示板。お迎えに来た保護者にその日の様子が伝わるよう、活動レポートが毎日掲示される

子どもの興味関心を軸に、保育者が遊びをサポート

 あそびの森あきわに勤める保育者を年齢別に見ると、20代と40代以上の大きく2つのグループに分かれるそう。この年齢の分布は、都市部の保育園でもよく見かけるパターンですが、半分が20代だとパッと見た感じでは「若い先生が多いなあ」という印象を受けやすいことは事実です。このような保育者の年齢やその構成は、保育の仕事にどのように作用してくるのでしょう。園長の竹内勝哉先生とのお話の中にヒントがありました。

山下 園内を見ると、段ボールでシャンプー台や鏡台を再現した美容室コーナーや、大きなスクリーンのある映画館まで子どもたちが作り上げているんですね。これらは誰が主導してできたものですか?

園長 子どもたちが一から考えて、試行錯誤しながら作ったものです。あそびの森あきわでは、保育者があらかじめ活動を計画して「指導」的に行う従来型の保育から、興味関心を軸にして子どもたちがとことん遊び込めるように保育者が「サポート」するスタイルに変えてきました。美容室や映画館も子どもたちの興味関心から広がって、継続的に時間をかけて作り上げたものです。

園内は子どもたちが遊びの中で作りあげた作品でいっぱい。左が記事内で触れた「美容室コーナー」
園内は子どもたちが遊びの中で作りあげた作品でいっぱい。左が記事内で触れた「美容室コーナー」
園内は子どもたちが遊びの中で作りあげた作品でいっぱい。左が記事内で触れた「美容室コーナー」
園内は子どもたちが遊びの中で作りあげた作品でいっぱい。左が記事内で触れた「美容室コーナー」

山下 子どもたちが遊びの主題を自由に決められたとしても、やはり最初はできないことも多いですよね? 例えば美容室ごっこをするために段ボールでシャンプー台を作ろうとしたとき、私たち大人でも構造を調べたり実物をよく見たりしないと到底作れません。保育者が作り方をアドバイスしたりしているのでしょうか?