ここるく代表取締役の山下真実です。「託児付きランチサービス『ここるく』」を起業したのが5年前。それまでは投資銀行や金融系コンサルで働いていたので、起業して全くの異業種に飛び込んだわけですが、そこから自社のサービスを良くするために保育について研究し始め、気づけば保育オタクに。オタクの目からこの業界を見ていると、「保育関係者ではない普通のママ・パパには、保育園ごとの特徴や良さが伝わりづらい」というジレンマをとても感じます。

そこで本連載では、異業種から保育の「中の人」になったからこそ得られた独自の視点で、本当に良い保育とは何かを、分かりやすく伝えていきたいと思います。

今回は、園と保護者とのコミュニケーションについてです。園と保護者とが協力関係のもとに、子どもたちの豊かな園生活を育むには、普段からどのような関わりが必要なのか、取材しました。

園と保護者の間に立ちはだかるコミュニケーションの壁

 「保育園とコミュニケーションが取りづらい」。そう感じたことはありませんか? 「子どもたちが園でその日何をし、どんな風に過ごすのか?」「子どもは楽しんでいるのか?」親として知っておきたいこうした情報を、園から思うように聞くことができずに困っている、という声をよく耳にします。

 保育園は普段保護者が働く職場環境とは異なる点が多くあります。とくに言語以外の情報を多用する子どもと接している保育士と、言語や数値をベースとした会話が求められる企業勤めの保護者とでは、お互いのコミュニケーションスタイルにズレがあることも、そうした困惑が生じる要因の一つでしょう。園がこうした「ズレ」を理解し、保護者とのコミュニケーションに意識的に取り組まない限り、園と保護者との間には見えない壁ができてしまいがちです。

 今回は、そんな保護者とのコミュニケーションに着目して、世田谷区にある認可保育園「世田谷仁慈保幼園」を取材してきました。