ここるく代表取締役の山下真実です。「託児付きランチサービス『ここるく』」を起業したのが6年前。それまでは投資銀行や金融系コンサルで働いていたので、起業して全くの異業種に飛び込んだわけですが、そこから自社のサービスを良くするために保育について研究し始め、気づけば保育オタクに。オタクの目からこの業界を見ていると、「保育関係者ではない普通のママ・パパには、保育園ごとの特徴や良さが伝わりづらい」というジレンマをとても感じます。

そこで本連載では、異業種から保育の「中の人」になったからこそ得られた独自の視点で、本当に良い保育とは何かを、分かりやすく伝えていきたいと思います。

幼児期に主体的に動けるか、0~2歳児での関わりが重要

 この連載でこれまで5つの園を紹介してきましたが、一つ反省していることがあります。それは、それぞれの園の良さや特徴を伝える際、3~5歳児の幼児クラスでの取り組みを中心にしてしまい、0~2歳児クラスでの保育に着目したエピソードを、あまりお伝えしてこなかったということ。

 年齢が大きくなればなるほど、子どもたちが自分自身でできることが増えます。それゆえ遊びの風景やその結果から子どもたちの「意図」が見えやすく、エピソードとして紹介しやすいことは確かです。でも、これまで訪れた園の先生たちが共通して言うのが、「幼児クラスになって子どもたちが本当の意味で主体的に動けるようにするためには、その前段階である0~2歳の保育環境や関わり合いが重要」だということ。

 そこで今回は、0~2歳の保育にフォーカスします。訪問したのは、丁寧な0~2歳児保育を実践する「陽だまりの丘保育園」(東京都中野区)。同園の保育を通じて、この時期の子どもを保育園に預けるうえで親として大切にしたいポイントを探ってみたいと思います。

子どもたちが制作したキノコや果物。飾り方ひとつにも子どもたちの育ちを一緒に楽しみ、応援する姿勢がうかがえる
子どもたちが制作したキノコや果物。飾り方ひとつにも子どもたちの育ちを一緒に楽しみ、応援する姿勢がうかがえる

 0~2歳児の保育の良さというのは、パッと見て直感的に伝わりづらいという特徴があります。もちろん保育の専門的な知識や経験がある人が見れば、その良しあしを見極めることはできるはずですが、保育のプロではない人にとっては、良い保育を目の前にしてもその良さに気づけない可能性が高い。その理由の一つに、この時期の保育の良さは大抵において、とても地味な見た目をしていることが考えられます。

 例えば、陽だまりの丘保育園の0~2歳児クラスのおもちゃのセレクションは、フェルトをいろいろな形に切ったもの、シンプルな積み木、素材を入れるさまざまな容器など、ぱっと見は地味で、どうやって遊ぶのか分かりづらいものが多い印象ですが、よくよく見れば、さまざまな遊びに使えるものばかり。これにはきちんとした狙いがあり、例えばベージュのフェルトを子どもの手のひらくらいの大きさに丸く切り出せば、パン、ピザ生地、お皿、チーズなどさまざまな食材としておままごと遊びで使えます。緑のフェルトを長く切り出せば、ネギやほうれん草などの食材に見立てておままごとに使ったり、電車遊びの切符やお店屋さんごっこの通貨にもなります。このように遊び方が固定されず、見立て方しだいでさまざまな表情を見せるおもちゃをたくさん用意しておくことで、子どもが持つ発想力と創造力で遊びが無限に広がります

陽だまりの丘保育園の0~2歳児クラスのおもちゃ棚。ぱっと見は地味でも、遊び方が固定されず、見立て方しだいでさまざまな表情を見せるおもちゃがたくさん用意されている
陽だまりの丘保育園の0~2歳児クラスのおもちゃ棚。ぱっと見は地味でも、遊び方が固定されず、見立て方しだいでさまざまな表情を見せるおもちゃがたくさん用意されている