連絡帳を書くための研修も

 一方で、保育のプロではない保護者にその保育の意図や意義を理解してもらうには、やはり時間や工夫も必要です。そのために、陽だまりの丘保育園では、保護者とのコミュニケーションにも力を入れています。保護者との日々のコミュニケーションについて、昨年度まで乳児主任として乳児保育を率いてきた保育士の間嶋利行先生にもお話を伺いました。

山下 園では子どもたちの成長する姿がたくさん見られても、保護者たちは直接それを見る機会が少ないので、保護者たちに子どもの成長を実感してもらうのは難しい面もありそうですね。その点で、何か工夫していることはありますか?

先生 「靴下を自分で引っ張ってはこうとしていました」など、その子のすてきな姿を見つけた時には、保育者同士で連携し合って、保護者に伝えるようにしています。

山下 そういう見過ごされがちな小さな成長の瞬間をとらえて、伝えてくれると親としてはうれしいですし、子育ての充実感をより一層味わうことができるようになりますね。

先生 子どもたちのことをしっかり見ていないと、こういった成長のワンシーンをとらえることはできないので、日ごろから一人ひとりをよく見るようにはしています。あと、連絡帳の書き方一つで伝わり方が変わるので、うちの園では「連絡帳研修」なんてのも実施しています。

山下 連絡帳を書くための研修ですか?

先生 はい。保護者にお渡しする連絡帳を書くために伝えるスキルを身につけてほしいと願っています。文章の書き方ももちろん指導しますが、それよりも子どもを見る観察力を鍛える効果の方が大きいですね。

丁寧な0~2歳児保育を実践する陽だまりの丘保育園の曽木書代園長(右)と、保育士の間嶋利行先生(左)
丁寧な0~2歳児保育を実践する陽だまりの丘保育園の曽木書代園長(右)と、保育士の間嶋利行先生(左)

 良い保育を生み出し実践し続けるためには、見えない部分にまで思考を巡らす実直さと、伝わりにくいことを伝えるための努力が必要なのだと、今回の訪問を通して実感しました。いわゆる「親受けする保育」をやるだけであれば、ここまでのエネルギーを費やす必要はないのでしょうが、あえて難しい道を選ぶ背景には、子どもたちの「成長したい」という内なる声によって、保育者たちのプロフェッショナルな探求心がさらに刺激されるからなのでしょう。子どもが成長し続ける環境では、大人も成長し続ける、ということなのかもしれません。

<陽だまりの丘保育園 基本情報>

施設の種類:認可保育園
所在地:東京都中野区東中野5丁目17-3
定員:164人(分園ふたば含む)
職員数:60人(パート含む)