多様性に対する受容性と、好きを突き詰める力

 「このグローバル時代に、世界で通用するために必要なことは2つ。多様性に対する受容性と、自分の“好き”を突き詰める力です。世界というのは多様性にあふれていて、肌の色、言語、文化、宗教、思想、すべてが違う人たちが、ごっちゃになって働いている。その中でやっていくためには、『自分とは違うこと』をまず受け入れ、理解して認めること。それがすべてのスタートです。いくら英語ができようが、この『多様性に対する受容性』がなければ、本当の意味でのコミュニケーションは取れないし、グローバルで活躍はできないでしょう。

 その上で、自分の強みを出していくことが大事です。それは『好き』を突き詰めていくことでしか見いだすことはできません。でもその子が何を好きかなんて、親でも分かりはしないんです。だから、とにかく“やらせてみる”しかない。その中から、子どもが自分で見つけて、熱中して、自分の強みとして昇華させていくんです」(夏野さん)

 2児の父でもある夏野さんは、子どもたちにどのような教育をしてきたのか。そして、自身も世界的に高い評価を受ける「グローバル人材」である夏野さんは、どのような幼少期を過ごしてきたのか。詳細に聞いたインタビュー(「夏野剛 多様性を受け入れ、尖った才能で突き抜けろ」)をこの特集でお伝えします。

 そして、サイエンス・ライターでフリースクール「YES International School」の創設者である竹内薫さんは、世界で必要とされる力は「人間コミュニケーション力」だと話します。

 「人間コミュニケーション力とは、言い換えれば『自分の頭で考えたことを発信する力』です。そのためにまずすべきことが、本を読むこと。本を読むことで語彙が広がり、言葉の使い方や文法が身につく。すなわち発信力が身につくのです」

 「本」が家庭教育の基本であると語る竹内さんのご自宅では、どんな本がどのように並べられているのか。そして子どもたちにどんな風に声掛けすることによって興味や関心を引き出しているのか。こちらもこの特集でご紹介します(「竹内薫 リビングの本棚から教育は始まっている」)。

 他にも、グローバルで活躍する上で必ず必要になる英語は、いつどの段階で学ぶのが子どもにとって最適なのか、言語学の専門家に聞きました(「2020年教育改革へ『国際人として使える英語』って?」)。また、海外での教育を考えたときに一度は検討する「海外留学」または「海外移住」について、実際に海外に移住し、現地で働きながら子どもを育てるママやパパが登場します(「オランダ在住ママ・パパが語る『定住に失敗する人が8割』」)。

 ぜひこの特集を通じて、「今、子どもにしてあげられること」について考えてみてください。まずは明日、竹内さんのインタビューをお送りします。

文/日経DUAL編集部 田中裕康 イメージカット/鈴木愛子

夏野剛
1965年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒(経営学修士)。NTTドコモ在籍中に、「iモード」「デコメ」「おサイフケータイ」など革新的なサービスを次々と立ち上げた。2008年にドコモ退社、現在は慶応義塾大学特別招聘教授のほか、セガサミーホールディングス、トランスコスモス、U-NEXTなどの取締役のほか、2019年2月よりドワンゴの代表取締役社長に就任。
竹内薫
日本語、英語、プログラミング言語で教えるトライリンガル教育のフリースクールYES International School横浜校、不登校・ホームスクーラーの学びの拠点となり、サポート支援するYES International School東京校長。東京大学教養学部教養学科(専攻:科学史・科学哲学)、東京大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了(専攻:高エネルギー物理学理論)。理学博士(Ph.D.)。大学院を修了後、サイエンス作家として活動。物理学の解説書や科学評論を中心に100冊を超える著作物を刊行。物理、数学、脳、宇宙など、幅広い科学ジャンルで発信を続ける。テレビ、ラジオ、講演など執筆以外にも多方面で精力的な活動を続けている。