子どもと海外旅行をしたことはありますか。共働きだと、なかなか長期の休みが取れない家庭もあるかもしれません。でも、日本からの直行便や深夜便を活用し、現地での過ごし方、遊び方をしっかり調べていけば、2~3泊という短い時間でもとびっきりの体験をすることができます。

 「グローバル化が叫ばれていますが、海外旅行をしたことのない子どもに『海外に興味を持て』と言っても、なかなか難しいものがあります」と専門家の先生。インターネットやテレビ、書籍などで、海外の様子を目にする機会はたくさんありますが、やはり百聞は一見に如かず、実際に海外に行き、その空気を全身で味わうからこそ、子どもの心に残る「何か」も多いと思います。

 この特集では、海外旅行の体験が、子どもの今や将来にどんな好影響をもたらすのか、2人の専門家の声を紹介します。また旅行会社や旅の達人を取材して、本物志向のパパ・ママに向けて編集部編「おすすめの旅プラン10」を作成したほか、計画を立てるうえでのポイントもお伝えしていきます。

(日経DUAL特選シリーズ/2018年6月収録記事を再掲載します。)

【2泊から!! 地球を丸ごと味わう親子海外旅行 特集】
第1回 海外旅行を通じた本物体験は、子どもの一生の財産 ←今回はココ
第2回 砂漠、ジャングル、ジンベエザメ 2~3泊本物体験
第3回 クルーズ、巨大建造物、最長鉄道 世界子連れ旅5選
第4回 親の得意分野を旅のテーマに 海外親子旅10の秘訣
第5回 小4息子とカンボジア遺跡へ「週末+α」旅は可能?
第6回 2泊でカンボジア満喫 遺跡をめぐり象や気球にも

子どもの脳を伸ばす原動力は好奇心。旅は好奇心を育む

 「子どもを海外旅行に連れていくことには大賛成です」と話すのは、医師であり東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之さん。

瀧靖之さん
瀧靖之さん

 「子どもの脳は後頭葉から前頭葉へと発達します。それぞれつかさどる機能に応じてタイミングよく刺激を与えることが重要なのですが、脳を伸ばすもっとも大きな原動力となるのが『好奇心』です。子ども自身に好奇心があるからこそ、『もっと知りたい、やってみたい』と物事を探究する『熱中体験』につながります。そして、その熱中する習慣が、将来の学習や仕事に生きてくるでしょう」

 好奇心を伸ばすよい機会となるのが「旅」、特に異文化に触れる「海外旅行」だといいます。

 「例えば、何となく英語の学習をスタートしても、子どもは『テストのため』という感覚しか持てないかもしれません。でも、学習前に海外旅行の経験があり、親が英語で知らない人とコミュニケーションを取っている姿を見ていれば、『そうか、英語が話せると、多くの人と会話ができるんだ』と好奇心を持ち、学ぶ意義を感じられるかもしれません。その経験をしてから英語を学ぶのと、よく分からないで学ぶのでは、意欲も全く違ってくるでしょう」

 語学以外にも、自然、文化、歴史、食べ物、生活習慣など、旅先には子どもが好奇心を持つ「本物体験」のチャンスがたくさん転がっています。

 「子どもの成長にとって、実体験に勝るものはありません。小学生のときに頭がよくて、その後にもっと伸びた子と、そこそこだった子、その違いは『本物体験』だといわれています。例えば図鑑などの本は子どもにとって、とてもよいもの。ただ、子どもが図鑑などの内容に興味を持ったとき、そのままにせず、すぐに本物を見せることはもっと大事です。今は海外情報をネットなどで得ることができますが、実際に行くと行かないとでは大違いでしょう」

「好奇心を伸ばすよい機会となるのが『旅』、特に異文化に触れる『海外旅行』です」と脳医学者の瀧さん
「好奇心を伸ばすよい機会となるのが『旅』、特に異文化に触れる『海外旅行』です」と脳医学者の瀧さん