壮大な景色に子どもが反応しなくても、焦らないで

 いざ海外に行くと、子どもはどんな反応を見せるのでしょうか。東洋大学国際観光学部国際観光学科教授の森下晶美さんは下記のように指摘します。

森下晶美さん

 「海外旅行を通じて子どもに感動を味わってもらいたい、と親が考えるとき、例えばグランド・キャニオンのような壮大な景色などを見た子どもが『わぁ~』と感動する、といった場面を想像するのではないでしょうか。でも実は小さな子どもは意外と『ふーん』という反応だったりするんです。私たち大人は、知っている日本の風景だったり、今までの経験だったりを踏まえて『すごい』と感動するのですが、子どもは経験や知識の蓄積が少ないので、見るものすべてが新しく、するっと心に入り込んでしまうのです

 逆に、子どもは自分が既に経験したことや、ふだんの生活との違いに興味を持つことが多いのだとか。「例えば外国のハンバーガーはなぜこんなに大きいのか、信号がなぜ縦型なのか、海がなんで日本とは違う色なのか…など、ふとしたことに興味を持ち、そこから異国への関心が広がっていくことがあります」

 「食事も同じです。いつも行くファミリーレストランとそんなに変わらなくても、お母さんやお父さんが英語で話して注文している。いつもは髪を振り乱して自転車に乗っているお母さんが、ホテルでテキパキとチェックインをしている…。そんな姿を見て『お父さん、お母さん、すごいな~』と驚くかもしれません」

 「世界に興味を持つ」ということ以外にも、旅の効果はあるのでしょうか。

 「子どもの自立心や、その後の生活習慣に与える影響も大きいです。旅行は、例えば2泊3日などの限られた時間のなかで行動しますよね。何時までにどこに行く、何をしなければいけない、という制約が多いなかで、子どもも時間軸を意識するようになります。また、お父さんやお母さんが荷物をいっぱい持っているのを見て、『持ってあげるよ』と自然と言葉が出たり、あまりきれいではない海外のトイレを経験して、日本に帰ってからも紙や水を節約するようになった、という声も聞きます」

 「家族の関係にもよい影響をもたらします。旅行中は家族が24時間一緒に過ごします。特に共働き家庭の場合、日本で3日間家族とずっと一緒にいる…ということは、ほとんどないのではないでしょうか。色々なことを一緒に体験することで、家族の絆が深まる、会話が増える、ということがあります。また、旅先で会う人と会話をしたり、パックツアーなら他の参加者と仲良くなったりと、全然知らない大人とコミュニケーションを取る経験にもなります。最近話題の『非認知能力』の一つに、社会性ということがあると思います。友達など近い人とコミュニケーションが取れることも大切ですが、自分とは違うコミュニティに属する人たちとコミュニケーションが取れることもとても重要です。旅先では様々なバックグラウンドを持つ人と触れ合うチャンスがあります