男性の育児休業の取得を促進するために、自民党の「男性の育休『義務化』を目指す議員連盟」や民間から提言されている「男性の育休義務化」。9月末に日本商工会議所と東京商工会議所が発表した「中小企業の7割が男性の育休取得義務化に反対」という調査結果は、どのような意味を持つのでしょうか。NPO法人ファザーリング・ジャパンの男性育休推進担当として活動し、共働き時代に即した両親学級の講師としても活躍する塚越 学さんに話を聞きました。

育休が取れない原因は企業側に。だから企業への義務化を提言

 9月29日に行われた厚生労働省の「労働政策審議会」で男性育休の議論が始まり、男性育休の取得促進には追い風が吹いています。

 同審議会では「『男性社員の育児休業取得の義務化』について、『反対』と回答した中小企業の割合は70.9%に達した」という日本・東京商工会議所の調査結果が発表されました(調査は今年7~8月に全国の中小企業を対象に行い、2939社が回答。「義務化は反対」、「義務化はどちらかというと反対」と回答した割合の合計)。

 業種別でみると、「運輸業」(81.5%が反対)、「建設業」(同74.6%)、「介護・看護業」(同74.5%)といった人手不足が深刻な業種・業界で、「反対」と回答した中小企業の割合が比較的多い結果となっています。

「男性社員の育児休業取得の義務化」について「反対」「どちらかというと反対」と回答した中小企業の割合は70.9%だった。日本・東京商工会議所が全国の中小企業の女性の活躍推進等への対応について調査した 「多様な人材の活躍に関する調査」(2020年9月発表)を元に日経DUALが作成
「男性社員の育児休業取得の義務化」について「反対」「どちらかというと反対」と回答した中小企業の割合は70.9%だった。日本・東京商工会議所が全国の中小企業の女性の活躍推進等への対応について調査した 「多様な人材の活躍に関する調査」(2020年9月発表)を元に日経DUALが作成

 反対が7割という数字はどう受け止めたらよいのでしょうか。塚越さんは、「そもそも、男性の育休『義務化』について『義務化』の意味が誤解されている可能性がある」と話します。「今提言されている『義務化』は企業が個人に育休取得を働きかける義務です。それは、男性の育休取得が進まない理由には、職場の人手不足、制度が整備されていない、育休を取得しづらい雰囲気があるといった、企業側の要因が上位にあるからです。

 ところが、私が同審議会の関係者に話を聞いたところ、『個人に対する義務化』と受け止めて、反対している中小企業が少なくないようです。育休取得を打診された上で、取るか取らないかは個人の自由があります。取りたくない人に取らせるという義務化ではないので、その誤解は解く必要があるでしょう