男性育休やパタハラは、今や企業のリスク管理上、見逃せない重要課題の一つと言える。どうすれば、男性育休が職場や社会に定着し、企業は従業員一人ひとりの実情に合わせた施策を打ち出せるのか。企業ができることを、具体的なステップで紹介する。自民党有志が進める男性育休義務化への見解も含めて、専門家の意見を聞いた。

育休推進、大切なのは現場の納得感

 「妻の出産に伴い育休を取って復帰したら、やりがいのない業務に一方的にアサインされた」。「子どもが生まれた直後に海外転勤を言い渡され、退職せざるを得なくなった」――。

 男性社員が育児休業を取ったことなどを理由に、嫌がらせなどを行う「パタニティ・ハラスメント」(パタハラ)。冒頭で紹介したのは、実際に起こったパタハラの例。育休取得者の職場復帰後のキャリアを支援する、育休後コンサルタントの山口理栄さんの元には、こうした不満の声が時々寄せられるという。

 男性社員による育児休業の取得率は、いまだ6.16%と低迷(2018年度、厚生労働省調べ)。カネカの騒動では、同社が「くるみんマーク」(仕事と子育ての両立支援に取り組んでいると認定された企業に付与されるマーク)を取得していたことも、世間にショックを与えた。こうした企業ですら、パタハラが疑われるような事例が発生するのはなぜだろうか。

 「男性の育児に対する意識が、社内で“まだら模様”になっていることが原因」と山口さんは指摘する。「たとえ企業のトップが『女性活躍』『男性育休』を進めると宣言しても、現場が納得していないし、受け止め切れていない。『女性活躍や男性の子育てには賛成だけど、うちの部署でそれをやられては仕事が回らない』と考えている社員がいるということです」

 男性が育休を取りにくい背景には、人員不足もあるという。「いまだに有給取得率すら低く、『皆が休みなく働いているのに、育休を取るなんてけしからん』という職場もある。こうした職場では、育休を取った男性に対して“裏切られ感”や反発が生まれ、パタハラにつながるケースがあります」

 企業はどうすればパタハラを防ぎ、男性育休を推し進められるのか。山口さんが提案するのは次の3ステップだ。

男性の育児休業取得率は、いまだ6.16%に留まる
男性の育児休業取得率は、いまだ6.16%に留まる