失敗しても途中で挫折しても、マイナスになることは一つもない

 介護職への復帰に向けてキャリアアップのための勉強を続けていた中井さんでしたが、復職を控えたある日、子育てをしながらその職場に復帰するのは難しいという事実が判明しました。

 「当時勤めていた会社から、『子育てがあるとはいえ、夜勤の免除はできない』『子どもの病気などで、急に休まれると迷惑』と言われてしまったのです。そのような環境では仕事と子育ての両立が難しいことから、急きょ転職することにしました」

 社会復帰を果たした中井さんの現在の勤務先は、障がい者施設を運営する社会福祉法人。相談員として、障がいを抱える方々の福祉プランの作成や、計画したプランを実施した後のモニタリング、施設利用を検討している障がい者の見学同行などに携わっています。

 採用選考の際には、育休中にキャリアアップに向けて学んでいるという事実が大きなアピール材料になりました。また、当時学んだ知識やスキルは、現在の相談員の仕事にも生きているのだとか。

 「例えば、今の仕事は人の話を聞く機会が多く、キャリアカウンセラー資格の継続学習で学んだ傾聴スキルがとても役立っています。また介護福祉士のスキルも、今後もし相談員からケアスタッフへ配置転換になった場合に、大きな武器になると思います」

 育休中の学びが仕事の可能性を広げ、新たな職場で充実した日々を過ごしている中井さん。転職してから社会福祉主事の資格も取得し、次は社会福祉士を目指す予定なのだとか。目標に向かってますます意欲的に学習を続けています。

 「一度きりの人生だから、やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい。ですから、育休中に将来のキャリアアップにつながる勉強をスタートさせたい方は、迷わずに挑戦してみてください。

 ちなみに私は介護福祉士の資格は取れたものの、医療事務は試験に落ちてしまいました。アクションを起こしたからといって必ずうまくいくとは限らないけれど、失敗してもマイナスになることは一つもありません。もし途中で挫折してしまっても、子育てと両立しながら新たな一歩を踏み出したという事実は大きな自信になると思います

(取材・文/佐野勝大)