「“積極ママ&隠れ消極ママ”これからのリーダーシップ術」特集の最後は、ママ社員のキャリアアップを後押しする企業の先進的な事例を紹介します。アクセンチュアは、社会の動きに先駆けて女性のキャリア形成に長期的な視点で取り組み、育休から復帰する社員にもきめ細かいサポート体制を組んでいます。

 同社でインクルージョン&ダイバーシティを統括する執行役員の堀江章子さんに、社員との対話から見えてきた女性の「自信のなさ」の実態や、ママたちが不安を感じることなくキャリアを磨き続けるために必要な会社の姿勢について聞きました。

【“積極ママ&隠れ消極ママ”これからのリーダーシップ術 特集】
第1回 ママ管理職 昇進の打診「受け入れた」61.4%
第2回 「普通のママが管理職になる時代」 3つの必須知識
第3回 アフラック 時短中の昇格に葛藤「私に務まる…?」
第4回 SCSKママ「次、課長」に驚き!でもやりがいある
第5回 アクセンチュア役員がママに助言「昇進は即受けて」 ←今回はココ

世界のアクセンチュアの中で、日本の女性活躍の遅れが顕著だった

日経DUAL編集部(以下、――) アクセンチュアでは、女性のスムーズなキャリア形成を促す取り組みに早くから力を入れていたそうですね。何かきっかけがあったのでしょうか。

堀江章子さん(以下、敬称略) 当社は日本に限らずグローバル全体の考え方として、お客様の様々なニーズに応えるうえで、多様な人が働きやすい環境にすることが重要だと捉えています。

 多様性の中身を考えたときに、日本の場合は女性が活躍できていないことが顕著でした。今は女性社員の比率は30%ですが、2006年は20%に満たない程度。経営幹部であるマネジング・ディレクターも2人しかいませんでした。女性の数が少なく、職位もジュニアクラスが大半で大きい仕事をしていない状況は、世界中のどこのアクセンチュアと比べても際立っていた。そこで、「日本の女性活躍の課題は何か」を調べていきました。

―― どんなことが見えてきましたか。

堀江 「育児と仕事の両立を支える制度が足りない」「管理職を増やすための工夫が足りない」「時短勤務など、制約のある人に対する扱いが十分でない」「キャリア構築が継続的にできる状況になっていない」といったことです。これらの課題を洗い出し、2006年から解決するための取り組みを始めました。

 当初は女性活躍推進を「自分の責任ではない」と思っている組織長もいましたが、今はみんなが重要なミッションであると認識しています。スタート当初から比べると女性管理職数は4倍になり、割合も15.5%まで増えています。その中にはママももちろんいます。

個人別に成長目標を設定し、達成度を見る絶対評価を導入

―― 女性活躍推進の取り組みについて具体的に教えてください。

堀江 まず、男女問わず多様な働き方を推進するために「パフォーマンスアチーブメント」という人事評価制度を導入しました。これは相対評価ではなく、その人自身の進捗で成果を測るというもの。例えば、残業無制限型の働き方をする人とワーママの成果は単純には比べられません。個人別に設定した目標に対する達成度を見るとともに、より短い時間で期待通りの成果やアウトプットが得られることを重視しています。

 柔軟な働き方としては、管理部門のみが対象だった在宅勤務制度を全社に広げ、遠隔会議や情報共有系のシステムの基盤も整備しました。

 女性のキャリア形成に功を奏しているのが、新入社員からシニアクラスまで、キャリアのレベル別に実施している女性向けの研修です。いきなりマネジャーになってと言われても、何をするのか分からなければ「やります」と答えられないですよね。そこで、まずは自分のクラスの仕事を全うし、それから次のキャリアに進むために必要なスキルを準備させるようにしました。

 また、「3R」といって、女性が管理職になるために不可欠な成長の機会がきちんと得られているかを「Right Sponsor(社内の後見人は適切か)」「Right Role(仕事で適切な役割を与えられているか)」「Right Client(成長に適切なお客様を担当しているか)」という三つの観点からモニタリングしています。これは女性管理職を増やすうえでかなり効果を上げていると実感しています。

―― 子育て中の社員に対してはどのような支援をしているのでしょうか。

<次のページからの内容>
● ママ社員への「誤った配慮」は、モチベーションを下げる結果に
● 女性は長期プランに確信がないと、昇進に「イエス」と答えない
● 不安要素は、会社に相談してみれば意外と解決できることも多い
● 「管理職としての自分に求められていること」を確認して
● 組織も、ママ社員に合わせた仕事の仕方に挑戦する必要がある