子どもを産んだ後も仕事を続けることが当たり前になり、キャリアに対し前向きな女性が増えていく中、「ママで管理職」はもはや一握りの特別な存在とは言えなくなりつつあります。とはいえ、まだまだ身近にロールモデルとなる存在は少ないのが現実。読者アンケートからも明らかになったように、「管理職=長時間労働の激務」というイメージから、意欲はあっても一歩を踏み出せない人が多いようです。

 そこで特集第3回と第4回では、実際に子育てと管理職の両立を実践しているワーママにリアルな声を聞いていきます。最初に紹介するのは、アフラック生命 コンタクトセンター統括部アライアンスサポートセンターのセンター長を務め、小4と小1の男の子のママでもある図子由布子さん(47歳)です。

【“積極ママ&隠れ消極ママ”これからのリーダーシップ術 特集】
第1回 ママ管理職 昇進の打診「受け入れた」61.4%
第2回 「普通のママが管理職になる時代」 3つの必須知識
第3回 アフラック 時短中の昇格に葛藤「私に務まる…?」 ←今回はココ
第4回 SCSKママ「次、課長」に驚き!でもやりがいある
第5回 アクセンチュア役員がママに助言「昇進は即受けて」

昇格して3年、「管理職になってみてよかった」

 「『このセンターをこんな組織にしたい』なんていうアイデアを自分が持つようになったことは意外な発見でした。課長代理という補佐的なポジションが長かったこともあって、私は上司が描くアイデアやビジョンを形にするために実務を担ったり、パイプ役として下の子たちに分かる言葉で伝えたりすることが得意だと思っていたんです」

 こう話す図子さんは管理職になって丸3年。最初の1年余りは課長格の「調査役」という役職で部下はいませんでしたが、2017年1月に現在のアライアンスサポートセンターのセンター長に就任しました。アフラックの保険を取り扱う提携先からの問い合わせに対応する部署で、社員15人とオペレーターの派遣社員約50人を率いています。

 「管理職はなってみてよかったです。責任は重いですが、部下って思っていた以上にかわいいんですよ」。穏やかな口調でそうほほ笑む図子さんは、「自然体管理職ママ」という印象です。

「いずれは管理職に」 そう言われても現実味がなかった

 今は時短勤務中だし、昇格なんて私には縁のない話――。そんなふうに思うワーママは少なくないかもしれません。かつての図子さんもその一人でした。

 「上司から最初に管理職昇格を打診されたのは、2014年11月ごろだったと思います。前々から『いずれは』みたいな話はいただいていましたが、長男を出産して2009年に復職して以降ずっと時短勤務だし、下の子も当時まだ3歳。何となくそういうラインから外れていると思っていました。当社はもともと女性活躍推進に積極的な会社ではありますが、時短勤務中に昇格する人をあまり見たことがなかったので、現実味がありませんでした」

 その後、上司との面談で正式に「チャレンジしてみないか」と言われた図子さん。その場では「ありがとうございます。考えます」と答えて席に戻ったところ、すぐに役員から電話がかかってきたそうです。「『今は会社がダイバーシティ推進で大きく変わっていく流れがあるし、チャンスだよ』と背中を押してもらって。それでチャレンジしてみますと答えました」

 面談で即答できなかったのは、やはり「今はいつでも会社にいられる状況ではない」ということが気になったためでした。毎日、夕方4時半か5時には会社を出なければならないし、仕事で何かあったときに必ず会社にいられるとは限らない。育児と仕事を両立している今の生活で管理職になったときをイメージしてみると、「自分が思うほど周りは気にしていないだろう」と頭では分かっていながらも、後ろめたさやプレッシャーを感じたといいます。

 一方で、「せっかく推してくれた会社の期待に応えたい」という気持ちや、以前から感じていた「後輩たちのためにも課長代理のポジションを空けて、次に進みたい」という思いも。「やってみてダメならそれなりの評価しか来ないということ。それはそれで自分の力が足りないと思えばいいんだ」と、管理職になることを決意しました。

図子由布子さんのモチベーショングラフ
図子由布子さんのモチベーショングラフ
<次のページからの内容>
● 最初は見通しの甘さゆえの「失敗」も
● 管理職は、ずっと会社にいることが仕事ではない
● 両立の秘訣は家族と会社の距離を近づけること
● 読者の疑問や不安に先輩からのアドバイス/「子どもも会社も大変」な時期は、必ず終わりが来る/引き受けてみて初めて、仕事への意外な意欲に気づけた