就職に有利なのは、専門性と英語での学位が同時に取得できるから

 ニュージーランドの教育制度の特徴の一つに、国立工科大学・ポリテクニックという高等教育機関がある。正式にはITP(Institute of Technology and Polytechnics)と呼ばれ、全16校すべて国立だ。松本さんが通っていたWelTecもITP校のひとつ。ITPでは、実務や応用力に重点が置かれ、レベルも基礎レベルから大学院レベルと幅広い選択肢が用意されている。

 注目したいのは、英語で専門分野での学位を獲得できるのはもちろん、インターンシップ制度や企業プロジェクトへの参加などがあることだ。このようなコースを取得すれば、留学後の“就活”が非常に有利になる。単に海外留学をするだけでは「英語で学位を取りました」で終わり、帰国して英語を強みに働き口を見つけるのが精一杯だろう。しかし、ITPを活用すれば現地就職につなげる実践が積めるというわけだ。

「テ・アウハ」の授業の様子。先生と学生がディスカッションしながら実践的に学ぶ。
「テ・アウハ」の授業の様子。先生と学生がディスカッションしながら実践的に学ぶ。
「テ・アウハ」の授業の様子。先生と学生がディスカッションしながら実践的に学ぶ。
「テ・アウハ」の授業の様子。先生と学生がディスカッションしながら実践的に学ぶ。
メディア、ダンス、エステなど実際の現場で使われている最新ツールを使って技術を習得する。
メディア、ダンス、エステなど実際の現場で使われている最新ツールを使って技術を習得する。
メディア、ダンス、エステなど実際の現場で使われている最新ツールを使って技術を習得する。
メディア、ダンス、エステなど実際の現場で使われている最新ツールを使って技術を習得する。

 2つの国立工科大学・ポリテクニック、WelTecと「フィティレイア」が今年共同創設したクリエイティブ専門機関「テ・アウハ」ディレクターのビクトリア・スパックマンさんに日本人留学生へのアドバイスを聞いた。

 「ニュージーランドの国立工科大学・ポリテクニックの強みは、実践と教育が一体化されていることです。英語力でいえばIELTS(アイエルツ)レベル6が身に付くようになります。ここには、日本をはじめ台湾、中国、東南アジアなどアジア各国から優秀な学生が集まり、テクノロジーやクリエイティブなどの分野で学士や修士号を取りにきています。ここでは、グラフィックデザイン、デジタルアート、ヘアメイク&ファッション、デジタルメディア、放送・ラジオ・映画…など多様な資格が取れます。重要な点は、技術や資格だけあっても学位がないと単純労働になってしまうことです。学士号レベルの教育を英語で取得すれば、キャリアパスも下に留まらず、経営層にまでしっかり上がっていけるチャンスがあるのです。ITPは世界で唯一の教育システム。<英語での学位+即戦力>という優位性をぜひ利用してください」(ビクトリアさん)。

「テ・アウハ」ディレクターのビクトリア・スパックマンさん。「単純労働にならないように、英語での学位も同時に取得して、ここウェリントンで有意義な仕事を獲得してほしい」
「テ・アウハ」ディレクターのビクトリア・スパックマンさん。「単純労働にならないように、英語での学位も同時に取得して、ここウェリントンで有意義な仕事を獲得してほしい」

 松本さんが留学後にしっかりと現地で就職できたのも、ITPの制度を活用したからだ。

 「WelTecは現実の産業界と学校をつないでくれる」と松本さん。「留学3年目で社外の組織や人脈ができるのは強みです。私はWelTecを卒業した後、世界有数の映画グループ会社“Stone Street Studios”で日本語ができるデザイナーを探しているという話があったので、応募しました。そこで幸運にも採用されて、9カ月間スタジオで働きました。最大の都市・オークランドでは日本人は多いけれど、ここウェリントンではまだ日本人が少ないというのもメリットかな」(松本さん)

松本さんはStone Street Studiosで『攻殻機動隊』の映画撮影時にデザイナーとして参加した。その後もフリーランスのグラフィックデザイナーとして活躍している。英語を強みに、世界中のプロジェクトが対象だ。
松本さんはStone Street Studiosで『攻殻機動隊』の映画撮影時にデザイナーとして参加した。その後もフリーランスのグラフィックデザイナーとして活躍している。英語を強みに、世界中のプロジェクトが対象だ。